事例紹介

相続・遺言2020.11.30.相続人の1人に不動産を「譲る」と記載された自筆証書遺言

 相続に関する手続きに携わる仕事をしておりますと、自筆証書遺言を拝見することがあります。

 以前、相続による不動産の名義の変更のご依頼を頂きました。夫が亡くなり、その妻が、夫の遺品を整理していたところ、自筆証書遺言が出てきたとのことでした。

自筆証書遺言を確認させて頂いたところ、自筆証書遺言には以下のように記載されておりました。

 

「私の財産の土地と建物を妻に譲る。」

 

 通常、遺言に記載する内容は、相続人に対して財産を渡したいときは「相続させる」と記載し、相続人ではない者に財産を渡したい場合は「遺贈する」と記載します。そして、その文言に従い、「相続させる」と遺言に記載されていれば、不動産の名義の変更の際の登記の原因は「相続」、「遺贈する」と遺言に記載されていれば「遺贈」とします。

 では、今回の「譲る」とある場合の登記の原因は「相続」なのか ?「遺贈」なのか? それとも、この自筆証書遺言での登記はできないのか ?

 遺言を作成された方は当然のことながら、すでにお亡くなりなっているため、「譲る」という文言の意図は、「相続させる」意図だったのか、「遺贈する」意図だったのか、もはや確認のしようがありません。

 また、「譲る」と記載されている場合の登記の取り扱いについての先例・通達もありません。そのため、対応に苦慮しました。

 

 最高裁判例において、遺言の解釈は遺言の文言を形式的に判断するだけでなく、遺言者の真意を探求すべきであるとされています。そのため、「譲る」と記載されているという理由で、遺言が無効になるとも考えにくいです。

 そこで、管轄の法務局に照会し、最終的に、「相続」を原因に、この自筆証書遺言で登記することができました。

 

 自筆証書遺言は公正証書遺言に比べ、コストがかかりませんが、このように、遺言の内容が不明確な場合は、相続人等が困ってしまう場合があります。

 残された方々に迷惑をかけないようにするためにも、お近くの専門家に遺言の内容をご相談されてみては、いかがでしょうか。

また、「不動産を譲る」、「不動産を渡す」、「不動産をやる」、「不動産を受け継がせる」という文言の自筆証書遺言が出てきたためお困りの方も弊所に一度ご相談頂ければと幸いです。

(文責:佐々木)

 

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