相続対策

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相続対策には、相続税対策と、親族間での争いの対策という二つの側面があります。 相続税は計算方法が決まっており、相続が発生してから対策を採るということは基本的にできません。相続税対策は生前に考えておくことが重要になります。 また、「相続は争族」と言われるほどにお金と親族の問題は切り離せません。遺産を分割しやすい形にしておく、不動産を渡せない人には預金を残す等の配慮が必要です。 弊所では、ご自身とご家庭の状況に合わせて効果的にサポートをさせていただきます。

遺言書作成

自分亡きあとの希望を伝えたいと考えた時、真っ先に思い浮かぶのは遺言書のことでしょう。終活ブームとそれに伴うエンディングノートの発売などにより、今や遺言書に“縁起でもない”というマイナスイメージはなくなりました。人生100年時代を迎えて、長い人生の後半戦に向き合った時に、「遺言書を書く」ということは特別なことではなく、自分亡き後、残される家族への想いを形にする方法としては、大変有効であり、今後ますます活用されていくと予想されます。

遺言書はどんな時に必要?

遺言は、財産を誰にどのように分配するのか、自宅やお墓、祭祀用具は誰が継ぐのか、親族にはどのように生きていってほしいのか等々、様々なことが書けますが、一定のルールを守って作成する必要があります。 次のような方は遺言書の作成をおすすめします。

  • 子供がいない
  • 相続人がいない または 疎遠である
  • 相続人の数が多い
  • 自分の死後も配偶者が安心して暮らせるようにしたい
  • 自宅以外にこれといった財産がない(遺産のほとんどが不動産である)
  • 家業を継ぐ子供がいる
  • まだ若いが会社を経営している
  • 内縁関係のパートナーがいる、認知していない子どもがいる
  • 再婚しており、前婚、後婚ともに子供がいるなど家族構成が複雑である
  • お世話になった人や慈善団体に財産を残したい

上記のような方々は、亡くなった後の手続きを、責任をもって引き受けてくれる人が不明確であったり、あるいは関わる人が多すぎて相続トラブルが発生する可能性が高いため、遺言書を作っておくことで、死後まわりの方々に迷惑をかかることを回避できます。

遺言書には普通方式と特別方式があり、一般的には普通方式が使われます。

普通方式遺言
普通方式には次の3種類があります。
  1. 自筆証書遺言
  2. 公正証書遺言
  3. 秘密証書遺言

このうち③の秘密証書遺言は、遺言内容を公証人に知られずに作成できるので、絶対に亡くなるまでは秘密を守りたい、誰にも内容を知られたくない、という場合に利用できますが、亡くなった後に遺言が発見されない可能性も高く、あまり使用されているものではありません。

主流である自筆証書遺言と公正証書遺言の特徴は次の通りです。

自筆証書遺書 公正証書遺言
メリット
  • ・一人で簡単にできる
  • ・遺言の存在及びその内容を秘密にできる。
  • ・公証人関与で方式不備にならない。
  • ・原本が公証人役場で保存されるので、変造・滅失のおそれがない。
デメリット
  • ・遺言書の紛失、相続人や他人による偽造・変造・隠匿の危険性有
  • ・方式不備、内容不備により法的に無効になるおそれがある
  • ・手数料が必要
  • ・手続きが面倒
  • ・証人から秘密が漏れる危険性有
概要 自分一人だけで作れる最も簡単な遺言書 公証人に作ってもらい、公正証書にする遺言
作成場所 どこでもよい 公証役場
証人 不要 二人以上
作成者 本人 公証人(口述を筆記する)
署名捺印 本人 本人、証人および公証人
検認※ 必要 不要
費用 かからない 公証人への手数料 証人への謝礼
※検認とは家庭裁判所が遺言書の存在および内容を確認するために調査する手続きのこと

自筆証書遺言

自筆証書遺言は全て手書きで紙に書き記す遺言書のことで、最低限の紙、ペンと印鑑があれば、誰でも気軽に作成が可能で費用もかからないものです。そのため、遺言書としては多く利用されていますが、法律で決められた要件を満たしていない、書き間違えがあるなどの理由で遺言書として無効になることがとても多いので注意が必要です。

令和元年7月1日より、自筆証書遺言の法改正が行われ、改正前は、全て手書きで行う必要がありましたが、今回の法改正により、全て手書きという部分に緩和措置が取られました。上記措置としては、財産目録には署名押印が必要ですが(裏表に記載されている場合は、その両面に必要)、署名押印さえ行えば、自筆でない財産目録を添付して自筆証書遺言を作成することができるようになりました。例えば、パソコン作成、通帳の写し及び、不動産登記事項証明書を目録として使用することが可能となり、高齢者や経験のない個人でも遺言書作成が身近に感じられるようになりました。しかし誰でも作成しやすくなった一方で、偽装や認知症の方への強要が増加することも懸念されており、そのようなことが起こると、相続人間での紛争等も起こりうる可能性もあります。

公正証書遺言

公正証書遺言は、公証役場で証人2名以上立会いのもと、作成するもので法的効力があります。公正証書遺言があれば、異議申し立てや訴訟が避けられ、相続争いが未然に防げるので、弊所では公正証書遺言の作成をおすすめしています。 弊所では単に財産の分配だけでなく、遺言を書かれる方がどのような考えに基づいて書いているのか、何を心配しているのか、まできちんと形にして残すことで、争いが起こる余地を極力減らし、気持ちの伝わる公正証書遺言の作成をお手伝いします。

特別方式遺言
緊急性がある場合にのみ認められる特別な方式の遺言が特別方式遺言です。特別方式には次の4種類があります。
  1. 一般危急時遺言 病気等で死期の迫った人が行う遺言。三人以上の証人の前で口授する。
  2. 難船危急時遺言 遭難した船舶に乗船中の人が、死期が迫ったときに行う遺言。二人以上の証人の前で口授する。
  3. 一般隔絶地遺言 伝染病などが原因で交通手段が遮断された場所にいる人が行う遺言。警察官一人、証人一人以上の立会が必要。
  4. 船舶隔絶地遺言 船舶中の旅客や乗務員が行う遺言。船長又は乗務員一人以上、証人二人以上が必要。
このうち①の一般危急遺言について解説します。

一般危急時遺言

一般危急時遺言は、遺言者が病気やその他の理由によって死亡の危機に瀕しているなど、緊急性がある場合にのみ認められる特別な方式の遺言が特別方式遺言です。弊所は一般危急時遺言に対応している数少ない事務所です。

一般危急時遺言が認められるには、以下のとおりの要件を満たす必要があります。

  • 疾病(病気)その他の事由により、遺言者に死亡の危急が迫っている
  • 証人3人以上の立会がある
※証人になれるのは、以下に該当しない人です。
  • 未成年者
  • 推定相続人、受遺者、それらの配偶者と直系血族
  • 公証人の配偶者や4親等内の親族、書記と使用人
手続は次の通りです。
  1. 証人の1人に言葉で遺言の趣旨を伝える
  2. 遺言の趣旨を聞いた証人がそれを書いて 遺言者と他の証人に読み聞かせるか、書いたものを閲覧させる
  3. すべての証人が、筆記内容が正確であることを承認して、 署名押印する

なお、一般危急時遺言は、効力発生のために一定の手続きが必要です。遺言が行われても、そのまま何も手続きをしない場合には効力が発生しません。証人の1人または利害関係人が、遺言が行われた日から20日以内に家庭裁判所に対し、一般危急時遺言の確認請求を行うことが必要です。さらに、遺言者が死亡した後には、効力が発生した一般危急時遺言について、家庭裁判所で検認の手続きを行う必要があります。一般危急時遺言の確認と検認は別の手続きなので、一般危急時遺言の確認をして遺言としての効力が発生しても、検認は別途必要になり、検認をしないと科料の制裁を科される可能性もあるので、注意が必要です。検認受ける場合には、遺言の開封前に家庭裁判所に検認申立を行います。

また、一般危急時遺言が行われても、その後遺言者が危急状態から回復した場合には、遺言者は普通方式で遺言することができるようになるので、一般危急時遺言を認める必要性がなくなります。そのため、遺言者が普通方式遺言を行うことができる状態になってから6ヶ月間生存したときに、一般危急時遺言は自然に効力を失います。

高齢化の進む日本において、老後や老後の後をいかに自分らしく、楽しく生きるか、そのためには終わり方をきちんと自分で決めたいという思いを抱く方が増えてきています。終わり良ければすべて良し、と申しますが、人間の心理として、終わり方についてきちん準備できていないとそれまでを十分に楽しむことが難しいのです。皆様のこれからの生活のお役に立てるよう、できる限りのお手伝いをさせていただきます。ぜひお気軽にご相談ください。

遺言書作成 費用
種別 基本報酬 実費 備考
相談 初回無料、 2回目から30分8,000円 土日祝時間外も 相談可能(要予約)
自筆証書遺言書作成 80,000円 戸籍取得費用等
公正証書遺言作成 80,000円 公証人費用等 証人1名分含む
種別 相談
基本報酬 初回無料、 2回目から30分8,000円
実費
備考 土日祝時間外も 相談可能(要予約)
種別 自筆証書遺言書作成
基本報酬 60,000円
実費 戸籍取得費用等
備考
種別 公正証書遺言作成
基本報酬 100,000円
実費 公証人費用等
備考 証人1名分含む

死後事務委任契約

終活というとお墓を購入し、葬儀社に葬儀の生前を予約しておけば大丈夫と思っていらっしゃる方も多いようですが、実はそうではありません。 お墓や葬儀以外にも「役所への死亡届提出、戸籍関係の手続き」「家の片づけ」「不動産や公共サービス契約の解約と費用の清算」「遺産相続の手続き」「住民税などの納税手続き」といった手続きは誰がするのか、また生前であっても「入院や老人ホームへの入所にあたって、身元引受人は誰に頼むか」「緊急時の対応は誰がするのか」といったことも決めておくことが必要です。

死後事務委任契約はどんな時に活用?
  • 身寄りがなく頼れる親族がいない
  • 親族も高齢なので頼れるかどうか不安
  • 家族と絶縁状態
  • 知人に頼むのは不安があるので信頼できる人に任せたい
  • 死後まわりの方々に迷惑をかけたくない
  • 残されるペットのことが心配
このような心配事を解決する方法の一つとして、死後事務委任契約があります。
死後事務委任契約とは

死後事務委任契約とは、委任者が受任者に亡くなった後の諸手続、葬儀、納骨、埋葬に関する事務等についての代理権を付与して、死後事務を委任する契約をいいます。

通常、ご自身が亡くなったあとの諸手続きは、家族・親族が無償でおこなってくれます。しかし、近年のライフスタイルの変化による晩婚化・未婚者の増加で、こどもがいない家族も増えています。身近に親族や頼れる方がいない場合、亡くなった後の手続きや片づけをしてくれる人がいません。役所や葬儀社は一部の手続きをしてはくれますが、全体的に責任を持つ人間がいない場合には遠方の親族に負担がかかったり、大家さんが迷惑を被ったりします。 葬儀や納骨の方法を遺言に書いておくこともできますが、遺言書で実現できることは財産のことだけで、葬儀や納骨に関してはあくまで遺言者の希望ということになります。 死後事務委任はいわば、死後のさまざまな事柄について、遺言書では実現できないご自身の願いをかなえるための手段なのです。

神楽坂法務合同事務所では、死後事務委任契約を結ぶことによりご依頼主様が亡くなられたときに必要な手続きを家族に代わっておこないます。また、死後事務委任契約に加えて、遺言書の作成や成年後見制度などで死後の備えを整えることにより、入院や施設入所時の身元引受人、緊急連絡先の引受、認知症になったときの代理人など、終活全般の暮らしに関するサポートについても弊所でお引受けすることが可能になります。 親族や知人など周りの方に費用や時間の負担をかけず、死後確実に自分の意思で後片付けをすることができます。

死後事務の主な内容

すぐに行うこと

  • 役所への死亡届の提出・火葬許可申請書の提出
  • 病院・医療施設の退院・退所手続き
  • 葬儀・火葬に関する手続き
  • 埋葬・散骨に関する手続き
  • 年金・健康保険・介護保険などの資格抹消手続き
  • 勤務先企業・期間の退職に伴う各種手続き

落ち着いたら行う手続き

  • 不動産契約の解約・住居引き渡しまでの管理
  • 遺品整理
  • 公共サービス(電気・ガス・水道等)の解約・精算手続き
  • 行政機関発行の資格証明書(運転免許証・パスポート・印鑑登録等)の返納手続き
  • 住民税や固定資産税の納税手続き

必要に応じて行う手続き

  • ペットの世話引き継ぎ
  • 関係者への死亡通知
  • SNS/メールアカウントの削除
このように死後事務委任契約では、遺言書で決めることができない葬儀や永代供養、家の片付けなど、様々なお手続きを代行できるよう決めておくことができます。
死後事務委任契約 料金の目安

契約時

  • 公正証書での契約書作成 100,000円(税別)
  • 死後事務委任契約を公正証書にて作成します。契約締結にかかる費用のほかに公証役場へ支払う手数料が別途必要となります。

執行費用

  • 死後事務報酬 200,000~500,000円前後(ご依頼内容により変動)
  • ご依頼主様が死亡時に、必要な諸経費および報酬(執行費用)をご用意いただきます。
  • 葬儀代などの諸経費は別途必要となります。
自分が亡くなった後に周りにご迷惑をかけたくない…このような心配事を解決する方法があります。上記以外にもご依頼主様のご状況に合わせて、死後の様々な事柄についてご希望を実現するサポートをいたします。ぜひ私どもにお任せください。

生前贈与

生前贈与とは、財産を生前に推定相続人その他の人に贈与することをいいます。主な目的は相続税を減らすことと、財産を事前に分配することです。資産の多い方にとっては相続対策の必須手段といえるでしょう。ご自身でされる方もいらっしゃいますが、税務署の調査が入ることがあるため、書面等をきちんと備えておくことが肝要です。 生前贈与は事前の詳細な相談と全体の計画をきちんと立てることが重要です。弊所では必要に応じて税理士と共同で受任いたします。

生前贈与のメリット

親族にできるだけ多くの財産を残したいなら、生前贈与を活用するのはとても有効な手段です。生前贈与のメリットは次の通りです。

1. 相続税の節税効果が見込める

2015(平成27)年の改正で相続税が増税され、贈与税は減税されたことで、相対的に「生前贈与」を利用する方が多くの資産を残せるようになりました。また、贈与税に新しく設けられた「特例贈与財産」により「20歳以上の直系尊属(子供や孫)」に贈与する場合、「特例税率」が適用され税率が軽減されることになりました。 贈与税には教育資金・結婚資金贈与の非課税など「様々な特例」もあるため、有効利用することで大幅な節税が可能になります。

2. 財産を自由に贈与することができる

民法では故人の遺産を誰が相続するかについて定められていますが、生前贈与であれば誰に何を渡しても自由です。法定相続人以外にも資産を渡すことが可能なのです。ある特定の資産を「この人に渡したい」という場合など、非常に有効な手段といえるでしょう。 このように、生前贈与は節税効果があるだけでなく、被相続人の意思を最大限反映させることができる制度なのです。

3. 相続人同士のトラブルを未然に回避

遺産を法定相続人で分割する場合、揉めるケースも少なくなく、たとえ遺書があったとしても、その有効性をめぐって相続争いが起こることがあります。すでに亡くなっている人の意思は確認できないため、簡単には決着がつきません。 こうしたトラブルを未然に防ぐためにも、生前贈与を利用して資産を渡しておくことができます。

生前贈与のデメリット

1. 税金が発生する

生前贈与のデメリットは、多かれ少なかれ贈与税などの各種税金がかかるケースが多いという点にあります。 特に土地・建物といった不動産の場合には、贈与の際に名義変更(登記)を行うのが一般的ですが、不動産の登記手数料と登録免許税・不動産取得税などの費用が発生します。

2. 不動産の贈与だと費用が余計に発生する

相続による名義変更なら登録免許税0.4%・不動産取得税なしに対し、登録免許税や不動産取得税に限れば、通常の贈与だとそれぞれ評価額の2%~3%ほどが課されてしまうので、不動産の生前贈与には余分な費用がかかると言えなくもないでしょう。

3. 遺産分割時に相続税の計算が面倒

また、被相続人の死亡前3年間に生前贈与されたものは相続時に遺産に含めて計算されるため、遺産分割や相続税の計算の際に注意しなければなりません。 そして、税率の高い相続税の課税逃れのために暦年贈与を使い続けると、税務署から厳しい調査を受けるリスクもあります。

生前贈与の主な非課税枠
1.住宅取得資金贈与の特例による非課税枠 最大1200万円
住宅の購入資金は、最大1200万円までの贈与が非課税です。 相続時精算課税制度と同時利用では、最大3700万円まで非課税です。 相続時精算課税制度+住宅取得資金贈与特例制度の利用で2500万円+1200万円=3700万円まで非課税になります。(省エネルギー、耐震性を備えた住宅の場合)
住宅取得資金贈与の特例のポイント
  • ・自分たちが住む家の取得資金でなければならない
  • ・親(または祖父祖母)からの贈与でなければならない
注意点
  • ・住宅ローンの支払いには使えない
  • ・土地だけの購入には使えない
2.相続時精算課税の特例による非課税枠 2500万円
65才以上の親から20才以上の子供へ、2500万円までの贈与を、非課税にできます。
相続時精算課税制度のポイント
  • ・贈与するものは現金、不動産などなんでもよい
  • ・65才以上の親からの贈与でなければならない
  • ・2500万円を超える部分の贈与は、一律20%の贈与税がかかる
注意点
  • ・110万円の基礎控除による贈与と一緒に利用できない
  • ・贈与した財産と相続財産を合計して相続税が課税される (最低6000万円以上の財産を相続した場合)
3.110万円の基礎控除による非課税枠(毎年)
これは、誰からどんな贈与を受けようとも1年間で贈与を受けた金額が110万円以内なら、贈与税はかからないというものです。 この非課税枠は贈与税の特例ではなく、贈与税に関する法律です。
110万円の基礎控除による贈与税非課税のポイント
  • 毎年同じ相手から同じ金額の贈与を受け取り続けていると、税務署から多額の贈与を毎年分割して行っているとみなされてしまい、贈与税の納付を求められる可能性があります。毎年書面を整備する、又は110万円を少し超える額を贈与し贈与税を払うなどの対策をとる必要があります。
4.婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置
居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例です。
優遇措置の適用要件
  • ・夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと
  • ・贈与された財産が、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭であること
  • ・贈与を受けた年の翌年3月15日までに、居住用不動産に贈与を受けた者が住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること
生前贈与の具体的な方法

実際に利用される生前贈与は大きく分けて3パターンあります。

1. 現金を贈与する

上にあげた特例1、3、4を最大限利用して現金を贈与することで相続税の節税になります。暦年贈与には注意点があり、まとめて贈与していると見做されると全体に対して贈与税が課税されることがあります。キチンと契約書を毎年作り、更に少額でも贈与税が課税されるように(年120万円等)して確定申告をするケースもあります。

2. 不動産を贈与する

特例2、3、5を利用しての贈与が多いです。特に特例2は「おしどり贈与」と呼ばれ、長年連れ添いあったご夫婦の間では一種の愛情表現のような形でされることも増えてきています。 また、アパートやマンションなど収益不動産を持っている場合、多少の費用は掛かっても次世代に早めに移転することがあります。これはキャッシュを生む資産を持っていると所得税や社会保険料が高額になることや現金が増えることで相続税が高額になるためです。不動産を贈与する場合、①契約書の作成、②贈与の不動産登記が必要です。

3. 自社の株式を贈与する

会社を経営されている方の場合、資産の大半が株式であることが多々あります。その場合、そのまま後継者に贈与してしまうと贈与税がかさんでしまいますが、かといって相続発生までそのままにしておくとお家騒動になりかねません。そこで事業承継税制として様々な特例が認められています。種類株式を利用して、先代が経営権を持って見守りながら後継者を育てる、といったことも可能です。株式の贈与は契約書の作成だけで済むこともあれば、会社への通知や株主総会の開催が必要なこともあります。

生前贈与 費用
  • 贈与契約書の作成 20,000円~ ※印紙代等実費
  • 贈与登記 50,000円~ ※登録免許税等実費
  • 生前贈与に関する全体的なコンサルティング 応相談
案件により金額は変動しますので詳細はお問い合わせください。

民事信託

民事信託とは、自分の財産を、「誰に」「どのような目的で」「いつ」渡すことを、あらかじめ生前に契約し、その財産を管理できる権利を信頼できる相手に移し、将来その契約を確実に実行させていくことです。 信託銀行の取り扱う信託商品や投資信託(商事信託)とは違い、財産の管理や移転・処分を目的に家族間で行うものとされており、より身近な問題に適した信託制度といえます。そのため家族信託と呼ばれることもあります。 これからの社会は、相続・扶養・後見・老後の生活の不安など様々な問題を抱えています。 民事信託はこれらの問題解決のひとつとしてその活用が期待されています。民事信託は信託契約の内容を原則として 自由に定めることができるため、その活用方法には幅があります。 ここでは4つの事例をご紹介します。

事例1 アパート管理信託
【家族構成】 Aさん、Bさん(Aさんの息子) 民事信託の事例

民事信託は、ある人の財産を特定の人に受け継ぐために、間に別の人が入り管理をしていく方法です。これらの人たちを、「委託者」、「受託者」、「受益者」と呼びます。

  • 委託者 財産を持ち、託す人。「財産をどのようにしたいか」で契約の内容が決まります。
  • 受託者 委託者の財産を託される人。委託者の意向を反映させるために、実際に動くのが受託者です。
  • 受益者 委託者の財産による利益を受け取る人。
Aさんは自分名義のアパートをもおっており、そこからの収益で暮らしています。現在はアパートの管理全般はAさんが一人で行っていますが、将来Aさんが認知症などで意思能力がなくなってしまった場合、賃貸借契約を結ぶことや、修繕工事をすることができなくなる可能性があり、財産を処分することもできず、相続対策もできなくなります。

そこで、息子Bさんは自らが受託者となり、母であるAさんとの間にアパート管理に関しての民事信託契約を結ぶことにしました。この契約によりAさんが持つ財産の管理・運用・処分の権利がBさんに与えられ、委託者及び受益者であるAさんは、それら財産からの利益を得る権利を持ちます。

このように民事信託契約を結んでおくことで、賃貸借契約の締結や、修繕工事あるいは財産の処分や売却なども、財産を管理する息子のBさんが手続きを行うことができます。

事例2 自宅売却信託
【家族構成】 Tさん、Kさん(Tさんの息子) 民事信託の事例

Tさんは、3年前に妻に先立たれ、現在は持ち家に一人暮らし。週に数回介護ヘルパーさんに来てもらっていますが、若干認知症の恐れもあり、近い将来高齢者施設に入居したいと考えています。そこで自宅売却にあたって、息子Kさんとの間で、委託者兼受益者をYさん、受託者をKさんとして、自宅不動産を信託財産とする民事信託契約を締結することにしました。また、信託契約の中で、信託監督人として司法書士に依頼をすることにしました。 受託者のKさんには、信託監督人の同意を得た上で、自宅不動産を売却できる権限を与え、売却後に残った利益は、受託者のKさんからTさんへの銀行口座に送金させることになりました。

息子であるKさんには、自宅不動産の管理処分権限を与えるが、受益者のTさんに不利益なことをしないように信託監督人である司法書士の同意を得なければ、勝手に不動産を処分できないようにしました。Kさんは、売却価格とそのタイミングを信託監督人と相談しながら決め、信託監督人は、売却の時期や価格について精査した結果、問題が無ければ同意をします(売却の時点で幸いにも依頼人で受益者であるTさんが元気であれば、もちろんTさんの意向を最大限尊重しなければなりません)。Kさんは、自らが登記簿上の所有者(売主)として売却し、その売買代金から諸費用(不動産仲介手数料、信託監督人の報酬など)を除いて残った売却益を、年金受取や施設利用料等の口座引落に設定されているTさんのメインの銀行口座に送金しました。これにより、受託者のKさんが預かる財産が無くなるので、「信託財産の消滅」という信託の終了事由の発生により信託契約は終了します。

信託監督人である司法書士は、適正な財産管理と売却手続きが実行されたかを監督し、最終的に受益者であるTさんに対して売却益の送金がされるところまできちんと見届けます。 自宅不動産のスムーズな売却のために家族信託を設定し、売却後の精算事務完了をもって信託が終了するような、不動産売却のための一時的な信託契約の例です。

事例3 子供のいない夫婦の家族信託
【家族構成】 Aさん、Bさん(Aさんの夫)、Cさん(Aさんの姪)
民事信託の事例 民事信託の事例
家族信託では右の図のように、
  1. 自分が亡くなったら夫
  2. 夫が亡くなったら姪
と、指定できるので夫の親族に財産が行くのを防ぐことができます。

Aさんは60代の女性です。Aさん夫婦には子供がいません。 Aさんには親から受け継いだ土地があり、その土地は人に貸しており、毎月賃料があるのでAさん夫婦はその賃料で生活しています。万一、Aさんが亡くなったらその土地はAさんの夫であるBさんに相続してもらいたいと思っておりそのような内容で遺言を作りました。しかし、その後、Bさんが亡くなると、Bさんの姉にその財産が行くことになります。先祖から引き継いだ土地なのでAさんとしてはその土地が夫の親族のものになってしまうのは防ぎたいとの希望でした。

今回の事例では、先祖代々の土地があり、その土地の地代を 自分 ⇒ 夫 ⇒ 姪というように受け取れるようにすることがAさんのご希望でした。

Aさんの希望を実現するために、Aさんから姪のCさんに土地を家族信託します。

そうすると名義は形式的にCさんに移りますが、登記簿には信託で名義が移ったと記録されます。地代はAさんが今までどおり受け取れますし、Aさんが亡くなったときや、Aさんの夫であるBさんが亡くなったときも相続手続きは不要ですのでスムーズに地代を受け取る人の変更ができます。そして、Aさんが亡くなった後は、夫のBさん、その後は姪のCさんという順番で、地代を受け取ることができます。

遺言では自分が亡くなったら誰に財産を渡すか指定できますがその次は決められません。 しかし、家族信託では、自分の次は夫、夫の次は姪・・・と何世代も先まで指定できます。 つまり家族信託を使えば「家督相続」が可能になります。

事例4 孫への贈与に民事信託を活用
【家族構成】 Aさん、Aさんの長男(Bさん)、Aさんの孫(Cさん) 民事信託の事例

Aさんは多くの資産を保有しており、先日長男に授かった孫のCさん為に財産を残したいと考えていました。長男夫婦に贈与も検討しましたが、長男夫婦に贈与をしたら結局長男夫婦の思うように財産が使われてしまう事を心配していました。Aさんとしては孫のCさんが高校を卒業した時、大学を卒業した時、結婚をした時にそれぞれ財産を渡したいと考えていました。Aさんは自分の死後、孫に財産が渡るように遺言書を残そうとしていました。遺言書で孫に財産を残すことは可能ですが、そうすると、相続の際に一度に全ての相続分の財産を孫が受け取ることになり、Aさんが望んでいる特定の時期に渡すことが出来ません。

そこでAさんのご希望を実現するために、Aさんが委託者となり長男のBさんを受託者、孫のCさんを受益者として信託契約をすることにしました。Aさんは財産を受託者名義の信託口座へ入金をします。受託者のBさんは指定された時期に受益者である孫のCさんに預金を給付します。信託契約を交わすことによってAさんの死後もAさんの希望通りに特定の時期に孫のCさんに金銭を渡すことが可能となりました。

また、孫のCさんは未成年であるため、受益者として適正に財産が受け取れるように信託監督人や受益者代理人を置くことでより確実に孫のCさんがAさんからの財産を受け取ることが可能となります。

民事信託契約 費用
  • 基本報酬 100,000~500,000円
  • 契約書作成含みます
  • 報酬金額は案件の複雑さや関係者の人数によります。詳細はお問い合わせください。

事業承継対策

事業承継とは、”現経営者から後継者へ事業のバトンタッチ”を行うことですが、企業がこれまで培ってきたさまざまな財産(人・物・金)を上手に引き継ぐことが、承継後の経営を安定させるためのポイントです。事業承継は相続税対策と見られがちですが、相続税対策は事業承継対策の一部に過ぎません。経営力を引き継ぐための後継者の育成に必要な期間として5年~10年はかかると考えている経営者が多くいます。早めに事業承継対策に取組み、後継者が十分に 「経営力」 を発揮できるよう、現経営者がバックアップすることが重要です。

事業承継の主な方法

事業承継の主な方法としては次の3つがあります。

1. 親族内承継

親族へ(経営者の子供など)事業を引き継ぐ方法です。資産の継承においては譲渡だけではなく、相続という形式をとることにより、節税効果が高くなるメリットもあります。相続人が後継者以外に存在する場合は資産の分配と相続について、相続人へ周知と同意を得る必要があります。

2. 親族外承継

社内外から後継者を選定し承継する方法です。社外から登用する場合は、社内の理解・協力を得ることがポイントとなります。また、負債の圧縮や株式取得のための借り入れが発生する場合は、金融機関と相談しながら債務の整理・譲渡を行います。

3. M&Aによる承継

企業同士の吸収や合併のことで、企業、事業のマッチングにより、事業の飛躍と承継を同時に実現できるため、近年最も注目されている方法です。それぞれの企業が持つ強みを活かしたM&Aを行うことで、企業価値を高めることができます。 M&Aの承継の場合は、株式譲渡・事業譲渡が主となります。

また、民事信託を活用した事業承継対策にも取り組んでおります。通常は財産の権利と財産の管理は一体となり、切り離すことはできませんが、民事信託を活用すると、名義を受託者(財産を管理する人)に移しておけば、委託者(財産の所有者)が例えば認知症になったとしても、受託者が財産を管理できるので、事業に影響はありません。

司法書士に依頼するメリット
  1. 社内や身内では相談しづらいことでも、外部の専門家になら話せることもあります。士業には守秘義務がございますので安心してご相談いただけます。
  2. 複雑な手続き・書類の作成を任せることで、貴重な時間と経費を削減できます。事業承継対策は、非常に多岐にわたります。種類株式の設定や民事信託の活用、遺言書の作成などの手続き、書類の作成、登記手続きなどは、当事務所に一括してお任せください。
  3. M&Aの仲介会社は手数料が非常に高額です。当事務所では士業の独自ネットワークで売先を探し、見つからない場合でも、費用の良心的な仲介会社をご紹介いたします。
  4. 事業承継に関する総合的なサポートを受けられます。法務のほか財務、会計、税務、労務とさまざまな観点から検討し、必要に応じて弁護士、公認会計士、税理士、社会保険労務士等と連携して総合的なサポートを提供いたします。

会社を継続していくため、単純に株式を相続することだけでなく、M&Aで会社を売却することや合併等の組織再編を伴うなど、様々な選択肢があります。 弊所では、お客様の要望をじっくりと伺い、企業法務に加えて経営参謀として経営者の皆様をサポートしております。

事業承継対策 費用

基本報酬 月額50,000円~

成年後見制度

成年後見制度とは、広義にはその意思能力にある継続的な衰えが認められる場合に、その衰えを補い、その者を法律的に支援するための制度をいいます。

1999年の民法改正で従来の禁治産制度に代わって制定され、翌2000年4月1日に施行されました。一口に成年後見といっても、民法に基づく法定後見と、任意後見契約に関する法律に基づく任意後見とがあります。

近年は、本人の親族が後見人に就任するよりも、親族以外の第三者である司法書士、弁護士、社会福祉士などの専門職が後見人に就任することが増えています。平成30年のデータでは(最高裁事務総局家庭局 「成年後見関係事件の概況」より)、成年後見人等(成年後見人,保佐人及び補助人)と本人との関係をみると,親族が成年後見人等に選任されたものが全体の約23.2%に対し、親族以外が成年後見人等に選任されたものは,全体の約76.8%であり,親族が成年後見人等に選任されるよりも、第三者の専門家が選任されることのほうが多いことがわかります。なお、親族以外の後見人としてもっとも多く選任されているのが、登記の専門家である司法書士です。

成年後見制度は、判断能力の程度によって、「法定後見制度」と「任意後見制度」の二つに区分されています。

法定後見制度

法定後見制度とは、認知症・知的障害・精神障害等の精神上の障害によって、すでに、判断能力が不十分な人に代わって、法律行為をしたり、被害にあった契約を取消したりする制度のことです。判断能力が減退している高齢者にも、悪質業者を含めて様々なセールスマンはやってきます。巧みなセールストークに根負けしたり、だまされたりして不本意にも契約をしてしまうこともあります。また、ヘルパーさんを手配したり、入院したりすることもあります。

こんなとき、その人のために、取消ができたり(同意権・取消権)、その人に代わって入院契約をしたり(代理権)する人が必要になります。しかし、すでに判断能力が不十分になっているので、契約によって依頼できません。

そこで、法律がそのような役割を担う人を決める仕組みを作りました。これが法定後見制度です。法律によって、支援者を定めることから、法定代理人という位置づけになります。 この法定後見制度利用の要件である判断能力の有無や程度については家庭裁判所が判断します。

法定後見制度で選任される法定代理人には以下の3つの種類があります。

1.後見人

日常生活に必要な買い物もできない状態にある場合、後見人が選任されます。 後見人は日常生活に関する行為を除くすべての法律行為を代わって行い、必要に応じて取消すことも行います。

2.保佐人

不動産の売却・賃貸借、自動車の購入・金銭の賃借等といった複雑な契約を一人できない状態にある場合、保佐人が選任されます。 保佐人は申立時に本人が選択した特定の法律行為の代理権や同意権・取消権によって支援します。 民法第13条第1項の行為については、当然、保佐人に同意権・取消権が与えられます。 民法第13条第1項の行為とは、下記の行為です。

  1. 貸金の元本の返済を受けたり、預貯金の払戻しを受けたりすること。
  2. 金銭を借り入れたり、保証人になること。
  3. 不動産をはじめとする重要な財産について、手に入れたり、手放したりすること。
  4. 民事訴訟で原告となる訴訟行為をすること。
  5. 贈与すること、和解・仲裁合意をすること。
  6. 相続の承認・放棄をしたり、遺産分割をすること。
  7. 贈与・遺贈を拒絶したり、不利な条件がついた贈与や遺贈を受けること。
  8. 新築・改築・増築や大修繕をすること。
  9. 一定の期間を超える賃貸借契約をすること。

3.補助人

不動産の売却・賃貸借、自動車の購入・金銭の賃借等といった複雑な契約を一人できるが、不安があり、本人が希望する場合は、補助人が選任されます。 補助人は、申立時に本人が選択した特定の法律行為の代理権や同意権・取消権によって支援します。但し、補助人に付与される同意権・取消権の対象となる特定の法律行為は民法第13条第1項で定められているものに限ります。

後見等の申立ては、本人・配偶者・4親等内の親族等が家庭裁判所に申立書を提出してすることになります。それから家庭裁判所が状況等を審査して、概ね2~4か月で審判がおります。制度の利用までには時間がかかるので、「そのうち利用すればいい」と思っているかたは、早めに判断した方がよいでしょう。 後見人等の候補者として、後見人として相当である場合で、相続人などに利害関係人全てから同意書がもらえる場合は、候補者が後見人等に選任される可能性が高いです。

後見人の主な業務は、本人の財産目録を作成して、年間収支計画書を作成し、本人に代わり財産の管理をすることです。長期にわたる介護によるストレスは計り知れないものです。 現代では年老いた老人が老人を介護する老々介護も大きな問題となっています。 介護によるストレスにより介護放棄がされてしまうケースも多々あります。 後見申立てをすることにより、裁判所の目を通した公平で誠実な財産の管理を一任でき、介護によるストレスも大きく軽減される事になります。

任意後見制度

任意後見制度とは、本人に判断能力がある間に、将来自分の判断能力が低下したときに任意後見人として生活を支える人を自分で選んでおく制度です。

法定後見制度では、本人の意思にかかわらず家庭裁判所により後見人が選ばれるのに対し、任意後見制度では、自分で後見人を選べ、お願いする内容も自分で決めることができます。

任意後見制度は本人の判断能力が低下したのちに、後見人が本人の代理人となり本人を支援する制度ですので、契約後その効力が発生するまでに数年から数十年かかることも予想されます。将来予測される事態に応じた契約は次のとおりです。

将来予測される事態 解決策
① 寝たきり、要介護など体が不自由になる 1. 財産管理等委任契約
② 任意後見が必要な時期を判断する 2. 見守り契約
③ 認知症など判断能力が低下する 3. 任意後見契約
(脳死状態) (尊厳死宣言)
④ 死亡・遺産相続 4. 遺言書
⑤ 死亡後の手続き 5. 死後事務委任契約

1. 財産管理等委任契約

成年後見制度は、判断能力が低下した本人を守るための制度であるため、身体能力が低下しても判断能力が低下しない限り保護されることはありません。つまり財産管理委任契約は、判断能力は低下していないが、病気などで身体が不自由になった時に、第三者に自分の財産や生活を守ってもらうための契約です。

財産管理等委任契約には、特別な決まりはなく、自分で自由に代理人を選ぶことができますし、代理人になる人にお願いすることについても、自分で自由に決めることができます。

たとえば、

  • 預貯金など金融機関の口座の管理
  • 生命保険などの保険の支払い請求および受領などの手続き
  • 日用品の購入、その他日常生活に関する物品の購入
  • 定期的な収入(家賃、地代、年金その他社会保障給付等)の受領および手続き
  • 定期的な支出(公共料金、保険料、税金、老人ホーム利用料等)の支払いおよび手続き
  • 証書等(登記済権利証、実印、銀行印)その他これらに準ずるものの保管および事務処理に必要な範囲の使用

といったことも、財産管理等委任契約でお願いすることができます。

財産管理等委任契約はいつからでも開始できますので、どのような場合に契約が開始するかを含めて、事前に決めておくことができます。

財産管理等委任契約は任意後見契約とセットで締結しておくことでメリットが大きくなります。任意後見が始まるまでの間は財産管理等委任契約で見守り、認知症などが発生し判断能力が低下したときに任意後見契約に切り替え、切れ目のなくご契約者本人をみまもっていくことができるからです。

2. 見守り契約

任意後見契約を締結しても、その後本人との接点がなくなると、本人の判断能力が低下しても任意後見受任者がそのことを知ることができず、後見契約が発生しないままとなることも考えられます。そこで、任意後見契約とともに、「任意後見受任者は、本人と2週間に一回ごとの電話連絡および3か月ごとの面談により、本人の生活状況及び身心の状況を見守り、判断能力が低下した場合には速やかに家庭裁判所に対して任意後見監督人選任の申立てを行う」といった内容の「見守り契約」を締結しておくと安心です。

見守り契約とは、任意後見がはじまるまでの間、判断能力が十分あるうちから契約者ご本人と定期的に連絡をとり、健康状態や生活状況を確認し、任意後見が必要な時期を判断するための契約です。

4. 遺言書

自分の死後に財産をどのように処分するかを定めるには、任意後見契約とは別に遺言を作成して残しておかなければいけません。遺言書の作成にあたっては後々のトラブルなどの回避のため相続人の調査をおこないます。

遺言書の作成サポートに関してはこちら

5. 死後事務委任契約

後見制度は、本人が死亡すれば後見人の職務は終了します。そのため、後見人には、葬儀や納骨・埋葬などを執り行う権限も義務もありません。そこで葬儀、埋葬や死後の諸手続き、遺品の整理等の死後の事務を親族の代わりに行うことを約束する「死後事務委任契約」を締結する必要があります。

死後事務委任契約に関してはこちら

任意後見契約は、公証人に依頼して、任意後見契約を公正証書にして締結します。 この公証人の費用は通常2~3万円程度で作成することができますが、将来型か即効型か移行型か、財産管理契約の有無、死後事務委任契約の有無、公証人に出張してもらうか否か、任意後見受任者の数によって異なってきます。

任意後見人の報酬は、親族や知人がなる場合は無報酬であることが多いようですが、弁護士や司法書士などの専門職が後見人となる場合、報酬の額は本人と任意後見人との合意により定めます。

自分が亡くなった後の意思を残す遺言書の作成については、社会的な認知が高まってきていますが、判断能力が衰えてから亡くなるまでの事を考えている方はまだまだ少ないようです。意思能力がなくなってからでは、自分の身の回りの決定をすることができなくなってしまいますので、あらかじめ将来に備え任意後見契約を結んでおくと、より一層将来に対する不安が軽減されます。

成年後見 費用
  • 成年後見申立 報酬 100,000円(実費として予納金などが別途必要です)
  • 任意後見契約時 報酬 100,000円(実費として印紙代などが別途必要です)
  • 就任申立時 報酬 50,000円(実費として印紙代などが別途必要です)

遺贈寄付

遺贈寄付とは、遺言によって特定の人や団体にご自身の財産の一部またはすべてを与えることをいいます。

「独り身で財産を引き継ぐ人がいないので、未来を担う子ども達のために寄付したい」

「遺産は相続させるだけでなく、社会や地域に寄付して今までお世話になった恩返しがしたい」など、近年は様々な理由で、社会貢献活動を行う認定NPO法人や公益法人などに遺産を寄付したいと考えている方が増えています。

また、遺贈したご寄付は、相続税が非課税となる税制上の優遇措置があります。

ご遺族の方が相続された財産を相続税の申告期間内に寄付した場合、ご寄付いただいた財産には、税制上の優遇措置が適用され、相続税がかかりません。(租税特別措置法第70条)

遺贈寄付するには

遺贈寄付には次の3つの方法があります。

1. 遺言による寄付

個人が自己の財産の全部、または一部をNPO法人、公益法人、学校法人などの民間非営利団体や、国、地方公共団体などに寄付することを遺言に遺す方法です。 この場合、寄付者は死亡した個人です。

2. 相続財産の寄付

手紙、エンディングノート、言葉などで遺族に相続財産の全部または一部を寄付することを伝える方法です。この場合、寄付者は相続人です。

3. 信託による寄付

信託を引き受ける者との契約によって財産の全部または一部を民間非営利団体に寄付することを約束する方法です。この場合、寄付者は個人と信託契約した受託者です。

また、遺贈は大きく分けて、特定遺贈と包括遺贈の2種類あります。

  • 特定遺贈 予め遺贈するものを特定している遺贈です。例えば現金はA団体へ、不動産はBさんへ、株式はCさんへ、というような感じです。
  • 包括遺贈 遺贈するものを特定せず、「全部」あるいは「全体の5割」などとして遺贈対象の資産を特定しない形の遺贈です。例えば、資産をすべてAさんへ または、資産の半分をBさん、もう半分をCさんへ というような感じです。包括遺贈はマイナスの資産(負債)も併せて遺贈してしまうことになるので注意が必要です。
遺贈寄付の注意点

1. 遺留分に注意

遺留分とは、一定の範囲の法定相続人に認められる、最低限の遺産取得分のことです。子供がいない人(両親もすでに他界)の場合は、兄弟姉妹には遺留分がありませんので、全財産を寄付したとしても、相続人となった兄弟姉妹から遺留分を主張されるおそれはありません。しかし例えば妻、子供などの法定相続人がいる場合は、全財産を寄付する遺言があったとしても、遺留分を侵害することはできませんので、相続人が遺留分を主張してきた場合には、寄付した財産を返さなければいけません。寄付先の団体を紛争に巻き込まないためにも、遺留分を侵害しない範囲での寄付に留める等の配慮が必要になります。

2. 包括遺贈?それとも特定遺贈?

包括遺贈にすると、受遺者となる寄付先の団体が相続人と同等の地位を得ることになり、プラスの資産だけでなく、マイナスの資産(負債)があれば、それも引き継ぐことになります。遺留分を主張する相続人がいない場合(兄弟相続など)に、全財産を寄付する包括遺贈は可能ですが、それ以外の場合は、寄付を受ける団体から特定遺贈での遺言作成にしてほしいと要望を受けることがあります。

3. 現物寄付に注意

不動産のような現物寄付の場合、売却価値がなく、売却が難しいケースもあります。逆に現物寄付する財産に、含み益がある場合には、みなし譲渡課税が発生します。みなし譲渡所得とは、譲渡所得が生じていないにもかかわらず、譲渡所得とみなされ、譲渡所得税の課税対象となることです。このみなし譲渡課税は、相続人である寄付先の団体が負担することになりますが、寄付されて全く手に入らない現物のために税金を支払わなければならないことになります。したがって、不動産の現物寄付は、寄付を受ける団体側が受け付けない場合も多く、通常現物を売却したうえで現金で寄付する方法が取られます。

寄付先の団体に迷惑をかけないためにも、遺贈寄付をする場合には必ず専門家へ相談することをお勧めします。

法定相続人以外の特定の人や団体に遺産を贈ったり、寄付したりするためには遺言書によってその意思を示す必要があります。遺贈のご意思は遺言書を残すことではじめて実現することができます。 弊社では、遺贈をするために「ご相談〜遺言書の作成〜遺言の執行引受け」まで、以下のサポートを行っております。

遺贈寄付の流れ

1. 事前のご相談

ご相談者様のお話を伺いながら、遺贈・終活に関する相談やどのような団体に支援したいかを一緒に考え、決定いたします。

2. 遺言執行者の候補者を決定

遺言者にかわって遺言書の内容を実現する「遺言執行者」を決めます。 遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な行為や手続きをする人のことです。財産を円滑に寄付するためには、財産の引渡しや登記など複雑な手続きをする必要があります。弊社では司法書士の資格者が「遺言執行者」を承り、責任を持ってお手続きさせていただきます。

3. 寄付先と打ち合わせ

遺贈先として指定した旨を遺贈先の団体に知らせます。

4. 遺言書の作成・保管・管理

遺言をするためには民法で定められた一定の方式で遺言書を作成することが必要です。法律で定められている方式にのっとって作成しないと、遺言は無効になってしまいます。弊社では安心確実な公正証書遺言の作成をお勧めしています。

5. 遺言の執行

遺言執行者と相談の上、ご家族や信頼できる方に遺言執行者の氏名と連絡先を伝え、連絡の手順を確認してください。遺言執行者は、遺言者のご逝去の連絡を受けて、遺言の執行を開始します。

6. 財産の引渡し

遺言執行者は寄付先の団体にご寄付いただいた財産の引き渡しをします。

神楽坂法務合同事務所は遺贈を前向きに考えているみなさまのご希望を確実にするために、専門家として多方面からサポートいたします。終活について考え始めたとき、親族への遺産相続だけではなく、未来への投資=遺贈寄付という選択肢もあります。ぜひご相談ください。

遺贈寄付 費用

すべて遺贈される場合

遺産総額 通常の執行引受け報酬 遺贈の場合の執行引受け報酬
最低報酬 50万円 25万円
1000万円未満 一律50万円 一律25万円
1000万円以上5000万円未満 基本報酬50万円+遺産総額の1% 基本報酬25万円+遺産総額の0.8%
5000万円以上1億円未満 基本報酬60万円+遺産総額の0.8% 基本報酬30万円+遺産総額の0.7%
1億円以上3億円未満 基本報酬80万円+遺産総額の0.7% 基本報酬40万円+遺産総額の0.5%
3億円超 基本報酬100万円+遺産総額の0.5% 基本報酬50万円+遺産総額の0.3%
遺産総額 最低報酬
通常の執行引受け報酬 50万円
遺贈の場合の執行引受け報酬 25万円
遺産総額 1000万円未満
通常の執行引受け報酬 一律50万円
遺贈の場合の執行引受け報酬 一律25万円
遺産総額 1000万円以上5000万円未満
通常の執行引受け報酬 基本報酬50万円+遺産総額の1%
遺贈の場合の執行引受け報酬 基本報酬25万円+遺産総額の0.8%
遺産総額 5000万円以上1億円未満
通常の執行引受け報酬 基本報酬60万円+遺産総額の0.8%
遺贈の場合の執行引受け報酬 基本報酬30万円+遺産総額の0.7%
遺産総額 1億円以上3億円未満
通常の執行引受け報酬 基本報酬80万円+遺産総額の0.7%
遺贈の場合の執行引受け報酬 基本報酬40万円+遺産総額の0.5%
遺産総額 3億円超
通常の執行引受け報酬 基本報酬100万円+遺産総額の0.5%
遺贈の場合の執行引受け報酬 基本報酬50万円+遺産総額の0.3%

遺産の一部を遺贈される場合

寄付する部分のみ半額を寄付 ※その他、公正証書遺言作成費用は別途必要になります。

 

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土日、祝、時間外も相談をお受けしておりますので(要予約)まずはお気軽に相談のご予約をお待ちしております。