事例紹介2026.01.5.遺産を「相続しない」ことと「相続放棄する」ことの違い

はじめに
亡くなった方の負債などを引き継ぎたくない場合に相続放棄という方法があることは広く知られていますが、具体的にどのような手続きを経ると相続放棄が認められるかをご存知の方は少ないように思います。一般の方が使用する用語としての相続放棄は、単に財産を相続しないことを差して言われる場合が多いと思います。例えば弊所でお客様から相続の概要を伺う際にも「長男が全財産を相続し、次男は相続を放棄します」といった形で用いられることがありますが、実際に家庭裁判所で相続放棄の手続きを行ったあるいは行う予定があるというケースはまれです。今回は相続放棄と遺産分割により財産を相続しないことの違いを取り上げます。
遺産分割協議
通常、遺言書がない場合の遺産相続は、相続人全員が集まって遺産分割協議を行い、それぞれの相続分を協議することになります。全員の合意が前提となりますが、特定の相続人のみが全財産を相続するといった分け方も可能です。
相続放棄
「相続放棄」は相続人が被相続人が亡くなった時点の住所を管轄する家庭裁判所に「相続放棄の申述書」を提出することで、相続人としての地位を放棄できる制度です。
過去のコラムでも取り上げていますので、こちらもご一読ください。
相続放棄の特色はほかの相続人とは無関係に自身の意思のみで手続きができること、相続放棄の申述書が受理されると相続開始時に遡って相続人でなかったとみなされること、相続開始を知った日から3か月以内に手続きをしなければならないことなどが挙げられます。
遺産分割協議に参加するメリット・デメリット
もしご自身が相続人で、何らかの理由で遺産を相続したくない場合、①遺産分割協議に参加したうえで、相続しなくて済むよう他の相続人と交渉する、②相続放棄の申述書を家庭裁判所に提出するという2通りの方法が想定されます。
遺産分割協議に参加するメリットとしては、他の相続人が納得すれば煩雑な手続きを経ずとも財産を相続しないことができます。相続放棄するにはご自身で3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出する必要があります。時間的な制約がある中で戸籍の取得や書類の作成をする必要があり、場合によっては大きな負担になります。その点遺産分割協議がまとまるのであれば、そうした負担をあえて負う必要はありません。
遺産分割に参加するデメリットとしては、必ずしも希望の通りの結果にまとまるとは限らないという点です。負債が多い場合や処分の難しい不動産を相続する場合などには、自身は相続しないと意思表示をしても、その意見が通るかどうかは他の相続人次第です。協議がまとまらなければ遺産分割調停となりますが、ここでも調停委員などの第三者の意見が自身の意見に沿ったものになる保証はありません。
相続放棄をするメリット・デメリット
相続放棄をするメリットとしては他の相続人の意向に左右されず手続きを進められる点が挙げられます。遺産分割協議をする場合は、意見が割れてしまった場合、自身の希望通りの内容にまとまるかはわかりません。その点相続放棄をすれば、手続きさえ適切に行えば一方的に相続人としての地位を放棄できるので確実です。
相続放棄をするデメリットとしては、撤回が原則としてできない点です。負債の方が多いと思っていても、後から遺産が出てくる場合も考えられます。そうした場合でも相続放棄をすると遺産を受け取ることはできません。
終わりに
相続財産は必ずしもプラスの財産とは限りません。負債だけでなく、処分にお金がかかる財産や、売れないマンションなど保有していると月々の出費が生じる財産もあります。相続放棄は手続きの概要を把握していないと、いざ相続が発生した際にしっかり対応するのは難しいでしょう。決まった期間に手続きをする必要もありますので、困ったときは早めに専門家にご相談ください。
(文責:安住)
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