事例紹介

不動産2022.11.8.所有者不明土地管理命令の新設 ~新民法264条~

はじめに

「所有者不明土地管理命令」とはなんでしょう。
所有者を特定する事ができない、またはその所在を知ることができない土地(共有の場合には共有持分)や建物について、管理の必要性があるときに、裁判所が管理人(所有者不明土地管理人)を選任し、その土地の管理を命令する処分をする事を可能とするものです。
今回の改正によって創設された制度となります。

制度創設の背景

所有者不明土地問題として、所在不明となっていたり、所有者を特定する事が出来ず、
所有者自身による管理が不十分で、適切な管理ができないという社会的問題がありました。

こうした問題に対処しようとする制度です。

例えば、隣地の管理が不十分で草木が生い茂ったり、自分の所有地に妨害状態が生じる恐れがある場合、隣地の所有者に対し、妨害状態の排除や予防を請求することが出来ます。
しかし、隣地の所有者の所在が不明だと、請求の対応が出来ない可能性があります。

このような場合に、所有者不明土地管理制度を利用し、選任された所有者不明土地管理人に対し、妨害排除や予防を請求することができるようになります。

利用の要件

では実際に、どのような場合に所有者不明土地管理制度を利用できるのでしょうか。

下記2点が要件としてあげられます。

 

・所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地であること。

・必要があると認められること。

 

この制度を利用できるのは、「利害関係人」及び「国の行政機関の長又は地方公共団体の長」です。「利害関係人」についてみると、どのような人が「利害関係人」当たるかは法律には明記されていないのですが、単なる隣人は「利害関係人」含まれないものの、隣地の管理不全状態により悪影響を被っている者は「利害関係人」に当たると考えられています。

「利害関係人」ができること

「利害関係人」等は、裁判所に対し、所有者不明土地管理命令の申立を行い、裁判所は「必要があると認めるとき」に所有者不明土地管理命令を発令し、所有者不明土地管理人が選任します。

このようにして、所有者不明土地管理人が選任されると、当該土地等の管理処分権は、所有者不明土地管理人にのみ帰属することになります。
また、所有者不明土地管理人は、裁判所の許可を得れば、当該所有者不明土地の所有者の同意がなくても、対象土地を売却することが出来ます。

以上のような所有者不明土地管理制度とは別に、今回の改正では、建物についての「所有者不明建物管理制度」も定められました。

新制度により所有者不明土地を買受けを希望する者が同制度の申立てを行い、管理人から買受けることによって、土地利用の活性化にもつながると期待されているのです。

 

文責:松井

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