事例紹介

商業登記2021.08.30.仮想通貨による現物出資その4

仮想通貨による現物出資シリーズその4は,、株式会社設立時(増資時もほぼ同様)の検査役の選任についてです。

検査役の選任とは、簡単に言うと現物出資をする際に出資するものの価値を見極めて、不正ができないようにし、会社や他の株主等に対し損害が及ばないようにする制度です。

例えば本社にするビルを出資するとして、そのビルを1億円分の価値として出資する場合に本当にその価値があるか裁判所の選任した検査役が調査し、問題なければ現物出資が認められます。

しかし、検査役の選任には時間もお金も掛かることから、通常は選任が不要になるように、会社法上認められた方法で価格を証明します。仮想通貨を現物出資する場合、具体的にどのようにすればよいのか以下ご紹介します。なお、合同会社の場合はそもそも検査役の選任は不要です。

 

検査役の選任の必要性

会社法第33条

1~9検査役の選任規定

10 前各項の規定は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める事項については、適用しない。

 

一 第28条第1号及び第2号の財産(以下この章において「現物出資財産等」という。)について定款に記載され、又は記録された価額の総額が500万円を超えない場合 同条第1号及び第2号に掲げる事項

 

二 現物出資財産等のうち、市場価格のある有価証券(金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第2条第1項に規定する有価証券をいい、同条第2項の規定により有価証券とみなされる権利を含む。以下同じ。)について定款に記載され、又は記録された価額が当該有価証券の市場価格として法務省令で定める方法により算定されるものを超えない場合 当該有価証券についての第28条第1号又は第2号に掲げる事項

 

三 現物出資財産等について定款に記載され、又は記録された価額が相当であることについて弁護士、弁護士法人、公認会計士(外国公認会計士(公認会計士法(昭和23年法律第103号)第16条の2第5項に規定する外国公認会計士をいう。)を含む。以下同じ。)、監査法人、税理士又は税理士法人の証明(現物出資財産等が不動産である場合にあっては、当該証明及び不動産鑑定士の鑑定評価。以下この号において同じ。)を受けた場合 第28条第1号又は第2号に掲げる事項(当該証明を受けた現物出資財産等に係るものに限る。)

条文を長々と記載しましたが、要するに

①500万円以下

②上場有価証券等である

③資格者の証明書を付ける

以上の方法で検査役の選任は要りませんということです。

実務上ほぼいずれかの方法で現物出資されています。

問題は、500万円以上仮想通貨を現物出資する場合に②か③で検査役の選任を省略できるか、ということです。

 

仮想通貨の現物出資で検査役の選任を回避する方法

結論からいうと、上記②は出来ませんが、③は出来ます。

②は条文をよく読むと「有価証券(金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第2条第1項に規定する有価証券をいい、同条第2項の規定により有価証券とみなされる権利を含む」

と規定されており、金融商品取引法第2条1項及び2項に記載されていないので、仮想通貨は有価証券等とはみなされないからダメ、ということです(金融商品取引法は載せると長いので検索してください)。

税制の話と同じですね。

感覚的には仮想通貨の特定の日の価格は簡単に分かりますし、それでいいような気がしますが、法的にはその当たり前に価格を③の資格者の証明書を付ける方法で証明することになります。証明といっても、当たり前すぎて誰に頼んでいいか困りますが、実務的には税理士に依頼することが多いかと思います。

 

終わりに

2021年8月時点では、仮想通貨の現物出資時には500万円を超えると税理士等の証明書が必要です。金融商品取引法関係の法改正が進み、譲渡益の課税が20%になり、証明書も不要になる日が早く来ることを祈ります。

文責:庄田

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