事例紹介2018.09.3.任意後見契約と補完する制度の活用
成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度があります。
法定後見制度とは、本人の判断能力が低下したときに、本人の親族等の申し立てにより、家庭裁判所が成年後見人等を選任する制度です。
それに対し、任意後見制度とは、本人に判断能力がある間に、将来自分の判断能力が低下したときに任意後見人として生活を支える人を自分で選んでおく制度です。
法定後見制度では、本人の意思にかかわらず家庭裁判所により後見人が選ばれるのに対し、任意後見制度では、自分で後見人を選べ、お願いする内容も自分で決めることができます。
後見制度は本人の判断能力が低下したのちに、後見人が本人の代理人となり本人を支援する制度ですので、任意後見制度の範囲外のことについては、以下のような制度を利用します。
①財産管理等委任契約
成年後見制度は、判断能力が低下した本人を守るための制度であるため、身体能力が低下しても判断能力が低下しない限り保護されることはありません。
判断能力が低下していない場合に、第三者に自分の財産や生活を守ってもらう制度として、「財産管理等委任契約」があります。
②見守り契約
任意後見契約を締結しても、その後本人との接点がなくなると、本人の判断能力が低下しても任意後見受任者がそのことを知ることができず、後見契約が発生しないままとなることも考えられます。
そこで、任意後見契約とともに、「任意後見受任者は、本人と2週間に一回ごとの電話連絡および3か月ごとの面談により、本人の生活状況及び身心の状況を見守り、判断能力が低下した場合には速やかに家庭裁判所に対して任意後見監督人選任の申立てを行う」といった内容の「見守り契約」を締結しておくと安心です。
③死後事務委任契約
後見制度は、本人が死亡すれば後見人の職務は終了します。
そのため、後見人には、葬儀や納骨・埋葬などを執り行う権限も義務もありません。そこでそのような死後の事務をおこなってもらう為には別途「死後事務委任契約」を締結する必要があります。
④遺言
自分の死後に財産をどのように処分するかを定めるには、任意後見契約とは別に遺言を作成して残しておかなければいけません。
上記⑤つの制度の時系列は以下のようになります。
①財産管理等委任契約→→→→後見制度→→→→③死後事務委任契約
②見守り契約 ④遺言
任意後見契約は、公証人に依頼して、任意後見契約を公正証書にして締結します。
この公証人の費用は通常2~3万円程度で作成することができますが、将来型か即効型か移行型か、財産管理契約の有無、死後事務委任契約の有無、公証人に出張してもらうか否か、任意後見受任者の数によって異なってきます。
任意後見人の報酬は、親族や知人がなる場合は無報酬であることが多いようですが、弁護士や司法書士などの専門職が後見人となる場合、報酬の額は本人と任意後見人との合意により定め、その額は大体月額3万円から5万円程度が多いようです。
自分が亡くなった後の意思を残す遺言書の作成については、社会的な認知が高まってきておりますが、判断能力が衰えてから亡くなるまでの事を考えている方はまだまだ少ないように感じます。
意思能力がなくなってからでは、自分の身の回りの決定をすることができなくなってしまいますので、あらかじめ将来に備え任意後見契約を結んでおくと、より一層将来に対する不安が軽減されると思います。
(文責:角谷)
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