事例紹介

事例紹介2018.02.23.「その余の財産は何某に相続させる」という文言

専門家に遺言書の作成を依頼した場合、または少し気の利いた本を見ながら自分で遺言書を作成した場合には、遺言書の最後の方に「その余の財産は長男何某に相続させる」といった文言が入っていることがよくあります。しかし、その余とは、その時点でのその他の財産という意味であれば問題ありませんが、遺言書を書いた後に多額の財産を取得した場合には、その余に含まれるのかという問題があります。

 

◇遺言書の解釈
最高裁判例から、遺言書の解釈は遺言書の文言を形式的に判断するだけでなく、遺言者の真意を探求すべきであり、遺言書の記載だけではなく、その他一切の事情を勘案して行うべきであるとされています。そうなると、遺言書作成後に多額の資産を取得した場合には「その余の財産は長男何某に相続させる」と書いてあっても、それだけではその余の財産を全て長男何某に相続させると解していいのかどうか、判断に迷うところです。

 

◇解決策
その余の財産について、遺産分割協議書が成立すればいいのですが、そうではない場合には最終的に訴訟になってしまいます。せっかく遺言書を残したのに、かえって争いになってしまっては本末転倒です。そこで、今回のような事例では、以下のように遺言の文言を工夫することが考えられます。
「本遺言書作成時に存在するその余の財産は長男何某に相続させる。本遺言書作成後に遺言者が取得した財産については、法定相続人に法定相続分に従って相続させる」

 

◇遺言書の書き換え
一度遺言書を作成した後、財産の内容に大きな変更があり、遺言者がそれに応じて遺言の中身を変更したいのであれば遺言書の書き換えをすることが必要です。書き換えとは以前の遺言書を撤回し、新しい遺言書を作成することです。しかし、遺言書を公正証書にしている場合、書き換えをするのに手数料(専門家や銀行費用と公証人費用)がかかることから、あまり利用されていません。そういった意味でも、将来の財産変動に対応できる遺言書を作成するメリットがあります。

 

◇結びに
遺言・相続に関する仕事をしている中で、自筆証書遺言を見ることが多々ありますが、兎に角間違いが多いという印象です。全体の8割前後は問題があり、無効になるケースも少なくありません。多少のコストがかかっても、遺言は公正証書にすることをお勧めします。また、本コラムのように様々な状況を想定して遺言を作ることは我々専門家でないと難しいと思いますので、是非ご活用ください。
文責:庄田

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