事例紹介2017.09.22.民事信託について⑤
前回、前々回、前々々回、前々々々回、に引き続き、
民事信託を勉強しようというコーナー。
今回は第5回目。
⑦担保権信託
旧信託法においては、債権を信託財産とした場合、債権に付随する抵当権等の担保権に関しても信託できるとする規定がなかったので、改正された信託法においてはこれを認めることになりました。
ただしこれも商事信託の世界の話であり、民事信託とは直接の関連性は薄いと思われますが、信託財産の対象が拡大したことは評価に値すると思います。
⑧受益証券発行信託
これも商事信託の世界の話ですが、旧信託法は貸付信託や投資信託のように特別法に服する信託商品についてのみ受益証券の発行を認めていたところ、改正された信託法においては、一般の信託でも受益証券の発行が認められるようになりました。
そのことから逆に民事信託の場合「受益証券を発行しない」という定めをしておく必要が生じたといわれています。
以上で新法で新たに認められたとする信託の種類の説明は終わりです。
少し難しい話が続きましたが、これをきっかけに信託について少しでも興味をもっていただければ幸いです。
新たな民事信託で認められた機能で、状況に応じた様々な法的契約を結ぶことが可能となりました。
しかしながら、信託という行為は、信じて託す、受託者ありきの話ですね。
「受託者のなり手がいない」という話もよく聞きます。
少子化、晩婚、世帯数の増加により、いざというときに自分の財産を託する相手がいないという例は、今後ますます増えてくると思われます。
私は家督相続の時代は知らず、「親は親」「子は子」という時代で生きてきました。
一部の専門家は「託す相手がいなければ家族信託は組めない」と断定するかたもいます。
確かにそうなのですが、大切なのは「今どうか」とういうよりも、「これからどう築いていくか」「どうしていきたいか」を考えることではないでしょうか。
「家族に託す人がいなければ家族信託はできません」と断定する専門家も、事業承継の相談で現社長が「後を継ぐ人材が育っていかなくて...」と愚痴を言えば、おそらく「それは経営者の責任だから、これから育てなさい」とアドバイスされるでしょう。
家族信託でもそれは同じ事だと思います。
自分の財産や思いを引き継いでくれる人物が今育っていなくても、今から育てればいいと思います。
昔は、子供が「家の事業や資産を引き継ぐ」と決められていたので、親も子も、はじめからそうした意識を持ち、厳しく教育し、また学び、来るべき承継に備えていたのでしょう。
現代はそうした、「意識や訓練」が薄れてきているため、「託せる人がいない」状態になるのだと思います。
だったら、そのことに気づいた時点から「託する人」を決め、「託するに足る人材」になるよう育成することが、資産や事業を所有する人の務めなのではないでしょうか。
そして専門家としては、今の状態では家族信託が成立しないとしても、ただ「できませんね」と冷たくいうのではなく、「ではどうする、どうすればよい」をお客様と一緒に考えていきたいと思います。
以上長くなりました。
fin
(文責:角谷)
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