事例紹介

事例紹介2017.09.15.民事信託について④

前回、前々回、前々々回に引き続き、

民事信託を勉強しようというコーナー。

今回は第4回目。

 

 

③自己信託

これも受益者連続型信託と並ぶ、改正された信託法の大きな目玉の一つです。

ただ、あまりにも従来の信託法の常識を覆しているため、学者の間には制度を認めたこと自体への批判がまだ残っていますし、わが国に従来なかった制度だけに、自己信託を活用した前例があまり存在しないことから、専門家の間でもまだあまり理解が進んでいない感があります。

自己信託は財産の所有者自身が自己を受託者とする信託ですから、信託契約でなく「信託宣言」とよばれており、民法上の遺言に極めて近い存在であるといえますが、遺言と異なるのは、信託宣言の対象物が他の財産と分離され分別管理の対象となることと、必ずしも自分の死と権利の移転をリンクさせる必要がないこと、そして必ず公正証書等の確定日付のある書面にしなければ効力が生じないことでしょう。

 

④目的信託

従来は信託設定当初から受益者が確定していることが信託成立の要件でしたが、改正された信託法ではこの要件を緩和しました。

例えば、「交通事故被害者の遺児の生活資金に充ててほしい」とか「将来おこるであろう大災害の被災者に寄付したい」といった意思で、自分の財産の一部を取り分けておきたいと考える人は少なくないと思われますが、従来の法制度では、この目的信託が禁止されていたため、例えば交通遺児育英基金や日本赤十字社に寄付するしかなく、必ずしも財産所有者の意思に敵う分配がなされているかが保証できない状態でした。

そこで改正された信託法では一定の要件のもとに、これを解禁することになったのです。

しかし、実はここでも税制上の問題があります。

税務の考え方では、信託は「贈与」の一類型であり、他益信託の場合には設定時の受益者に対して贈与税が課されるのが原則ですが、目的信託の場合は設定時に受益者が決まっていないことから、例外的に受託者に対して「みなし法人税」が課せられるという処理となっているのです。

すなわち自己信託を設定した瞬間に、受託者に対して課税されるので、現実にこれを行うことは困難となっており、制度はできたものの、税制が邪魔をして実際には使えないというのが実情なのですが、前記の福祉目的の信託設定に対して課税というのは社会的に矛盾があるので、早急に税制改正を求める必要があると考えます。

また、目的信託には20年という期間制限があることにも注意しなければならず、さらに現行法において、目的信託は信託業法の規制にかかるため、現実には民事信託としての設定は不可能と考えられています。

 

⑤事業信託

これは現時点では我が国においての実例はほとんどない言われていますが、実は改正された信託法の大きな目玉の一つであり、将来的には大いに活用される時代が来る可能性を秘めた制度なのです。

旧信託法では、信託財産として信託の対象とできるものには制限があり、「事業」のように財産としての形が明確でなく、かつ必ずと言っていくらいに「付随的債務」があるものについては、一切信託の対象とすることはできませんでした。

ところが、改正された信託法においては、とにかく「財産」と思われるものについては全て信託の対象となり、かつそれらに信託財産い付随している債務についても、受託者が当該債務を引き受ける契約を併用することで、実質的に信託可能ということになりました。

したがって、「事業」についても、それを構成する財産と債務を一緒に特定することによって、実質的に信託の対象とすることが可能となり、事業信託が解禁されたのと同じ状態になったといわれています。

 

⑥限定責任信託

これは改正された信託法第2条12項により「受託者が当該信託のすべての信託財産責任負担債務について信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う信託」をいいます。

これは詐害信託の際に登場する委託者と債権者の関係ではなく、受託者が信託財産を運用したりする際に生じた債務(信託財産責任負担債務)について、その債務にかかる債権者との関係において、信託財産を超える部分の責任を負わない(受託者固有の財産まで執行の対象としない)特約、すなわち「有限責任」を定めることができるとういう規定です。

例えば、受託者が自らの裁量で債権者から資金を借り入れして、収益不動産や上場株式等の投機的資産を購入したものの、運用の失敗によって信託財産が債務超過の状態に陥ってしまったとしても、受託者は債権者に対して自らの固有財産を提供する責任をおわないということですから、そもそも信託財産の投機的運用を行うことが想定されていない民事信託とはあまり関係のない制度だと思います。

また信託法第216条により、限定責任信託である旨の登記が必要なこともあり、商事信託の世界でも、現状ではあまり活用されていないようです。

 

改正後の民事信託の目玉についての紹介もいよいよ大詰めとなりましたが、今日はこんなところで。

 

See you next time!!

(文責:角谷)

 

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