事例紹介

登記2017.02.10.共有物分割の登録免許税

1つの不動産を共同して使用している状態のことを、不動産を共有しているといいます。この共有されている不動産の事を共有物といいます。

共有の場合には所有権割合の持分が必要になります。もしこの所有権割合が定められていない場合は、各共有者の持分は等しいものと推定します(民法第250条)

このような状態であると、共有者の誰がどこの土地を所有しているのか特定できないため、家を建てたり銀行で融資を受けたりする際に、お互いの権利関係が複雑になってしまいます。

そこで特定しようとし、1筆の土地を2筆に分けます。これを分筆といいます。分筆して、それぞれ単独の所有にします。これを共有物分割といいます。

2筆に分筆しても、どちらの土地も共有の状態です。これをそれぞれ持分全部移転の登記をして単有にすることを共有物分割の登記といいます。

この共有物分割の登記をする場合に登録免許税の軽減措置があります。

登録免許税法施行令9条1項

共有物である土地の所有権の移転の登記において法第十七条第一項 又は別表第一第一号(二)ロ若しくは(十二)ロ(2)の規定の適用がある場合におけるその共有物について有していた所有権の持分に応じた価額に対応する部分は、当該共有物の分割による所有権の持分の移転の登記に係る土地(以下この項において「対象土地」という。)につき当該登記(以下この項において「対象登記」という。)の直前に分筆による登記事項の変更の登記(以下この項において「分筆登記」という。)がされている場合であつて当該対象登記が当該分筆登記に係る他の土地の全部又は一部の所有権の持分の移転の登記(当該共有物の分割によるものに限る。以下この項において「他の持分移転登記」という。)と同時に申請されたときの当該対象土地の所有権の持分の移転に係る土地の価額のうち当該他の持分移転登記において減少する当該他の土地の所有権の持分の価額に応じた当該対象土地の持分の価額に対応する部分とする。

非常に読みづらいですが、内容を要約すると、土地を分筆して、共有物分割の登記をした際に、その共有物について有していた持分に応じた価額に対応する部分を移転する場合に限り登録免許税の税率が1000分の4になるということです。

分筆を前提としないで単に共有の土地を単独所有とする共有物分割や、その共有物について有していた持分に応じた価額を超える部分についての税率は、通常どおり1000分の20となります。

例えば、甲土地(4000万円、400㎡)をA及びBがそれぞれ2分の1づつ共有していたのを、甲1(1000万円、100㎡)甲2(3000万円、300㎡)に分筆して、甲1をA単有、甲2をB単有とした場合は、

甲1をA単有とする登記は、そもそもAが所有していた不動産の価格を超えないので、1000分の4の軽減税率が適用され、B持分全部移転の登記の登録免許税は、500万円×1000分の4で、2万円となります。

甲2をB単有とする、A持分全部移転の登記は、移転する持分の評価額は1500万円で、500万円についてはもともとBが所有していたいた持分の価格を超えないので1000分の4が適用され、登録免許税は2万円となり、1000万円については、元々の持分価格を超えているので、1000分の20が適用されて、登録免許税は20万円となります。結局合計でA持分全部移転の登記の登録免許税は22万円となります。

このような変則的な登録免許税の計算を要求している理由は、単にひとつの土地を売買した場合でも、①所有権一部移転 持分1000分の1   税率 1000分の20

②A持分一部移転 持分1000分の999  税率 1000分の4

として、登録免許税を逃れる行為を防止するためです。

更に、3者間での共有物分割の場合はどうなのか、分筆で道路に接する土地とそうでない土地になる場合は、などなど論点が多い共有物分割ですが、続きはいずれご紹介できればよいなと思います。

(文責:庄田)

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