事例紹介

相続・遺言2023.07.10.上場株式を相続する時の注意点(単元未満株式について)

 

亡くなった方が上場株式をお持ちだった場合、証券会社に連絡をして相続手続きを行うことになります。しかし、場合によっては証券会社での手続き以外に、信託銀行等でも株式の相続手続きを行う必要があります。その典型的な例は単元未満株を保有していたケースです。

単元未満株とは、株式の各銘柄ごとに決められている最低売買単位である1単元(現在、上場会社は100株)に満たない株式のことです。

2009年1月5日の株券電子化によって、国内の上場株式については株券はすべて廃止されました。電子化までに証券保管振替機構(ほふり)に株券が預託された株式については、ほふり及び証券会社の口座で管理されています。

一方、電子化までに株券が預託されなかった株式については、株主名簿を管理する信託銀行等が開設した「特別口座」で管理されることになりました。

そして単元未満株(端株)は通常株券が発行されないため、電子化までにほふりに預託されず、現在も信託銀行等の「特別口座」で管理されているケースが多いです。

つまり同じ人が保有する同じ銘柄であっても、証券会社の口座と信託銀行等の特別口座で分かれて菅理されているケースがあり、その場合、全ての株式を相続するためには、証券会社の手続きとは別に、信託銀行等でも相続手続きを行う必要があります。

亡くなった方が単元未満株(端株)を持っていたかどうかは、以下の3つの方法で確認することができます。

①株主名簿管理人から届く「配当金計算書」を確認する

保有している株式について配当金が出る場合は、株主名簿管理人から「配当金計算書」が送られてきます。配当金計算書を確認すれば、少なくとも「信託銀行等での手続きが確実に不要なケース」については確認することができます。

具体的には、配当金計算書の税額欄で確認します。税額欄が「*(アスタリスク)」になっている場合(金額が記載されていない場合)は、配当金の受取方法として「株式数比例配分方式」を選択しています。

株式数比例分配方式とは、株式等を保有している証券会社の口座で受け取る方法で、株式数比例配分方式は、特別口座が一つでも開設されている場合は選択できません。よって、この場合は特別口座は確実に無いため、信託銀行等での相続手続きは不要という事になります。

また、税額欄のほかに、所有株式数からも判断することができます。株式数の下2桁が「00」以外(150とか1013とか)の場合、単元未満株を保有しているので、今後信託銀行等での手続きが必要な可能性が高いです。しかしこの場合は、信託銀行等での手続きが確実に必要とは言えません。被相続人が単元未満株を証券会社の口座で保有している可能性があるためです。証券会社の取引残高報告書等で確認できる株式数が、配当金計算書と一致していれば、その銘柄は単元未満株含めてすべて証券会社取り扱いという事になります。

②株主名簿管理人に直接問い合わせる

お手元に配当金計算書や配当金領収書、株主総会の招集通知等がある場合、株主名簿管理人が記載されているので、直接問い合わせて単元未満株や特別口座の有無を確認するという方法もあります。

また、そのような書面が無くても、銘柄の会社のホームページ等で株主名簿管理人を確認することができます。(「会社名」+「株主名簿管理人」で検索すれば出てきます。)

ただ、保有銘柄が多い場合、一つ一つ確認していくのは大変な作業ではあります。

③ほふりの調査を行う

被相続人が保有していた銘柄がわからない場合や、そもそも株式を持っていたかどうかわからない場合、ほふり(証券保管振替機構)の調査を行いましょう。

ほふりは日本国内の上場株式等の振替を一括管理しているため、ほふりに登録済加入者情報の開示請求を行う事で、被相続人が開設していた証券会社の口座だけでなく、信託銀行等の特別口座についても把握することができます。

ほふりの調査は、戸籍謄本等の必要書類を揃えて郵送で行います。請求から開示結果が届くまでの期間は2~3週間程度です。調査には所定の手数料がかかります。

ほふり調査の結果、信託銀行等に特別口座があることがわかったら、口座の開設先に問い合わせて、残高証明書や相続手続きに必要な書類の取り寄せを行うことになります。

以上のとおり、上場株式を相続する際は、単元未満株式の有無に注意が必要です。また上場株式の相続手続き以外にも、金融資産や不動産等の相続は手続きが複雑で、非常に手間のかかる作業になります。まずは自分で頑張ってみるということも手ですが、専門家の力を借りてスムーズに終わらせる方法もありますので、ご自身にあった方法をご検討ください。

 

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