事例紹介

不動産2023.05.8.2023年4月1日施行の改正民法について(共有関係)~後編~

はじめに

2023年4月から民法が改正されます。今回の改正は、近年問題となっている所有者不明土地の問題の解決や土地利用の円滑化を目的として、不動産登記法等の改正とともに行われました。

このコラムでは前回の2023年4月1日施行の改正民法について(共有関係・前編)」からの続きで、共有関係の規定で見直された以下の2点のうちについて解説していきます。

①共有物の変更・管理に関する規律の見直し(前編をご覧ください。)

②共有関係を解消しやすくする仕組みの創設

 

②共有関係を解消しやすくする仕組みの創設

共有関係を解消しやすくするための改正点は、主に以下の2点です。

(1)裁判による共有物分割手続の整備

いままでの民法では、裁判による共有物分割の方法として現物分割と競売分割(換価分割)が定められており、代償分割(賠償分割)は判例により許容されているにすぎませんでした。
そこで今回の改正で、裁判による共有物分割の方法として、代償分割(賠償分割)が可能であることを明記するとともに、現物分割・代償分割(賠償分割)のいずれもできない場合、又は分割によって共有物の価格を著しく減少させるおそれがある場合(現物分割によって共有物の価格を著しく減少させるおそれがあり、代償分割(賠償分割)もできない場合)に、競売分割(換価分割)を行うこととし、分割の検討順序を明確にしました。(258条2項、3項)

また裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができることも明文化されました。(258条4項)

( 2)所在等不明共有者の不動産の共有持分を取得・処分する制度の創設

いままでの民法では、共有者の中に所在等不明共有者がいる場合、共有物分割訴訟等の裁判手続を行えない場合もあり、共有を解消することが非常に困難でした。
そこで今回の改正では、共有者が他の共有者を知ることができないとき・その所在を知ることができないときは、裁判所に申し立てた共有者(以下「申立共有者」)に所在等不明共有者の持分を取得させられる裁判をすることができる制度が創設されました。

申立共有者が2人以上の場合は、各共有者に所在不明等共有者の持ち分を、共有者の持ち分に応じて分割して取得させることとなります(262条の2)。

また、共有者の中に所在等不明共有者がいる場合、他の共有者が共有物件の売却等の処分を希望するときには、裁判所が申立共有者に所在等不明共有者の持分を譲渡する権限を付与できる制度も創設されました。(民法262条の3)
この制度による譲渡権限は、所在等不明共有者以外の共有者全員が持分の全部を譲渡することを条件とするものであり、不動産全体を特定の第三者に譲渡するケースでのみ行使可能です。

なお、これらの制度は、共有の形態が遺産共有(相続開始後遺産分割前までの共有状態)の場合には、相続開始から10年を経過しなければ利用できません。(民法262の2第3項、262条の3第2項)

おわりに

以上、前後編に渡って、共有関係の規定についてご説明しました。
新民法により、今までよりは、共有の土地や建物の管理や変更・処分がしやすくなりました。
しかし依然として、共有下で起きた問題をご自身や当事者間のみで解決することは非常に困難です。お困りの際は、専門家にご相談されることをお勧めします。

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司法書士法人・土地家屋調査士法人・行政書士 神楽坂法務合同事務所
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