事例紹介2017.08.22.民事信託について①
最近はやりの民事信託。
そうは言っても何の事なのかよくわかりませんね。
私も普通の商事信託についてはそれなりに詳しいのですが、民事信託はよくわからないので、一般の方でもわかるように、一緒に勉強していきたいと思います。
信託の原点は、中世ヨーロッパの十字軍と言われているそうです。
国家の命を受け、十字軍として異国の地へと遠征に出向く兵士を「委託者(settler)」、
その兵士が最も信頼する友人を「受託者(trustee)」、
そして出征する兵士の家族を「受益者(beneficiary)」
とする新たな形態の契約行為が、必要に迫られて誕生したそうです。
兵士(委託者)は、その所有している財産の名義を友人(受託者)に預け、
その財産を友人自らの責任でもって適切に管理・運用すること、
そこから出てくる収益を必ず兵士の家族(受益者)に手渡すこと、
を約束してもらい、安心して戦地に出向くことができたのです。
このことから、信託の本質とは、委託者から受益者に対する「贈与」あるいは「相続の先渡し(死因贈与)」であることがわかると思います。
ただし、この贈与にはいくつかの「条件」がつけられることになります。
十字軍の例でいいますと、まず兵士の財産(物権)を即時に直接的に兵士の家族が取得するのではなく、それは名義上の財産所有者となる友人を介して受益権(債権)として段階的に手渡されるということ、
次に、もし将来、兵士が戦場から元気に帰還した場合は、その財産は元の状態に復される可能性もあり、かつ不幸にも兵士が傷病兵として帰還して自ら財産管理できない状況となってしまった場合には、信託が継続されることもあり得るということです。
この「受託者が名義上の所有者になり、実質的な権利はすべて受益者に移る」という点が、
名義も権利も全て移転する「贈与」や「売買」、
あるいは名義は移転しないで権利の一部が移転するだけの「賃貸」や「寄託」、
いずれも移転しない「委任」や「代理」とは異なる、
「信託」だけがもつ大きな特徴となります。
さらに、受託者となる者は、その契約によって自らが利益を得ることはなく、
ただ大切な友人である委託者の「信頼に応える」ために「託された行為」を、
委託者が深い愛情をもって養ってきた家族、すなわち受益者のために遂行するだけの、
言わば債務を負うだけの立場となります。
まさに、信託の受託者は「紳士と紳士の高潔なる約束」を誠実に履行しているということになるのです。
そういった観点から改めて信託を考えてみますと、それを構成し動かしているのは、
「願い」や「想い」を持っている委託者の意志であり、
それを真摯に叶え実らせようとする受託者の誠意であり、
彼らの強い気持ちや愛情を深い感謝をもって受け止める受益者という、
それぞれの人間の純粋な心情であるということがわかると思います。
熱いですね。
「究極の財産管理ツール 民事信託超入門」河合保弘著 より引用致しました。
以上が信託の基本構造です。
委託者の「信頼に応える」ために、受託者が「託された行為」を受益者の為に遂行する契約の事を信託契約というのです。
河合先生の熱い想いでお腹がいっぱいになってしまったので、今日はこんなところで。
See you next time!!
(文責:角谷)
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