事例紹介

不動産2017.07.25.シェアハウスの法律上の規制について

最近シェアハウスについてのお問い合わせが何件か重なったため、問題をまとめてみたいと思います。
シェアハウスとは、世帯構成員ではない数人が共同生活を送る宿舎です。
玄関・トイレ・バス・キッチンが基本的に共用で、寝室が各入居者に用意されています。
最近流行りのおしゃれな物件では共用スペースとして談話室や勉強スペースがあったりもします。
共同住宅は各住戸に玄関があり、それぞれキッチンやトイレがあることで区別されます。
さて、最近何かと話題になるシェアハウスは何が問題なのでしょうか。
今回は、中古の戸建て(東京都木造居宅2階建て延べ90㎡、道路への接道6m)をシェアハウスへとリフォームするケースをモデルに、①建築基準法、②建築確認、③各自治体のルールの三つの側面からお話しします。

文責:庄田

 

①9.6ショック

シェアハウス業界では9.6ショックといわれる大きな発表が、2013年9月6日、国土交通省からありました。「シェアハウス=寄宿舎」であるとされたのです。
寄宿舎は建築基準法上の“特殊建築物”に当たり、厳しい要件が課されてしまうため、当時あったシェアハウスの8~9割が違法になってしまい、大問題になりました。

 

①-2規制緩和

国交省の発表が社会の現状にそぐわないことから、東京都が「東京都建築安全条例に基づく寄宿舎に係る建築基準等についての見直しの考え方」を発表し、2015年4月1日に条例として施行されました。
詳しくはこちらhttp://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/topics/h27/topi001.html

 

法=建築基準法、令=建築基準法施行令

一般住宅 寄宿舎・特殊建築物 本寄宿舎・緩和後
廊下の幅

(令119)

各階居室200㎡超えで中廊下1.6m

片廊下1.2m必要

幅員制限なし
階段の勾配

(令23)

蹴上23cm以下

踏み面15cm以上

蹴上22cm以下

踏み面21cm以上

同左
階段の数

(令121)

2階居室100㎡超えは2以上の直通階段 100㎡未満のため適用無
敷地内通路

(令128)

幅1.5m以上 特に小規模なため不

要※①

間仕切り壁

(令114)

主要な壁は準耐火構造とし、天井裏等に達する 要件を満たせば準耐火でなくともよい※②
採光に必要な開口部(法28) 床面積の1/7以上の面積 同左 同左
火災報知器

(消防法施行令21)

住宅用火災報知器を各居室に設置 延べ500㎡以上は自動火災報知機を設置 同一般居宅
窓先空地(東京都建築安全条例19) 各居室幅員1.5m又は2mの空地に接する窓を持つ 不要※①
居室面積(東京都建築安全条例19) 居室の床面積7㎡以上 既存建築物の転用等やむを得ない場合は7㎡未満でも可

 

今回は路地状敷地ではないものとするため、建築基準法上の問題は以上です。

 

②建築確認の必要性
建物の用途を変更する際には、用途変更の建築確認申請が必要になることがあります。
基準は、建築基準法6条1項の「~(寄宿舎)特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が100㎡を超えるもの」です。今回は100㎡を超えないため必要ありません。
なお、50㎡、60㎡などと分けて工事をしてもダメです。合計して計算されます。

 

③各自治体のルール
今回の物件は東京都にあるものとするため、東京都建築安全条例が適用されました。
しかし、物件が千葉県にあれば千葉県建築基準法施行条例が適用され、細かい部分が異なってきます。必ず物件所在地の自治体ルールを確認する必要があります。

 

結びに

誰がこんなにややこしくしたんだろう、といういうくらいに法律が入り乱れています。専門家でも迷うことが多々あります。しかし、そこにビジネスチャンスがある限り、挑戦する不動産会社はあるでしょう。そんな意欲ある会社を全力でバックアップすべく、日々勉強です。

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司法書士法人・土地家屋調査士法人・行政書士 神楽坂法務合同事務所
代表 庄田 和樹
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