事例紹介

不動産2017.06.22.境界(筆界)と所有権界のお話あれこれ    

 

境界(筆界、以下は境界で統一)と所有権界が違うものであるということは以前にコラムで紹介しましたが、今回は境界と所有権界にまつわる問題や法律の規定について身近なところからお話ししたいと思います。

 

 

外壁を50cm離す?

建物を建てるとき、隣地の境界線(所有権界)から50cm離して建築しないといけないという話を聞いたことがあると思います。それは次の規定によります。

 

民法 第234条(境界線付近の建築の制限)

建物を築造するには、境界線から五十センチメートル以上の距離を保たなければならない。

2.前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から一年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。

 

外壁後退などということもあります。しかし、現実には50cm離れていないことは多々あります。それは外壁が耐火壁である場合の特例(主として繁華街)か、単純に勝手に建ててしまっている場合もあります。事前に隣地の方と協議をしっかりとせずに建築してしまった場合、住んでいる限りずっと「隣は50cm離さずに勝手に家を建てた。常識のない人だ」と言われる可能性が十分にあります(現実によくある話です)。

 

 

ブロック塀は誰のもの?

家と家の間にブロック塀等の塀があることは一般的です。ではそれは誰のものでしょうか。片方の人が自分の土地の内側いっぱいに境界線に沿ってきちんと塀を作っていれば、まず問題になることはないでしょう。でも、例えば、塀がないので作りたいとき、塀がボロボロなので作り替えたいときはどうすればいいのでしょうか。また費用は誰の負担でしょうか。

 

民法 第225条(囲障の設置権)※囲障とは簡単に言うと塀のことです。

1. 2棟の建物がその所有者を異にし、かつ、その間に空地があるときは、各所有者は、他の所有者と共同の費用で、その境界に囲障を設けることができる。

2. 当事者間に協議が調わないときは、前項の囲障は、板塀または竹垣その他これらに類する材料のものであって、かつ、高さ2mのものでなければならない。

 

(囲障の設置及び保存の費用)

第226条

前条の囲障の設置および保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担する。

 

(相隣者の一人による囲障の設置)

第227条

相隣者の一人は、第225条第2項に規定する材料より良好なものを用い、または同項に規定する高さを増して囲障を設けることができる。ただし、これによって生ずる費用の増加額を負担しなければならない。

 

民法の規定では、塀を作ることは法律で認められています。ただし、勝手に作ることは出来ませんし、既存の塀を勝手に壊すこともできません。

塀を作るときは

1 隣地の方と話し合い、同意の上で

2 境界線に沿って

3 同意の通りの塀を作る

ことになります。費用負担は合意できればどちらが負担しても、折半しても構いません。

2の境界線に沿ってというのは、例えば「話し合いが面倒なので、自分の土地に引っ込めて建てればいいんでしょう?」といって塀を作ってしまうと、塀の外側の自分の土地が隣地に時効取得されてしまう可能性があるからです。

 

 

枝を切る?

庭のあるお家では外からの視線を遮る等のために木が植えられていることが多いかと思います。そしてお隣の木の枝が越境して入ってきていることもまた、ままあるかと思います。その枝を勝手に切ったらトラブルになることは誰でもわかります。

 

民法 第233条(竹木の枝の切除及び根の切取り)

1. 隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。

1. 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。

 

お隣の枝が境界を越えてきたら切ってもらいましょう。また根っこが越境していれば勝手に切ってしまいましょう。そのように民法ではなっています。どう考えても根っこを切ったら木に悪影響だと思いますが、根は隣から伸びているのかもっと遠くの土地から伸びているのか特定できないという理由から認められているようです。

 

 

終わりに

土地家屋調査士として境界確定業務をしていると、中には塀や屋根が隣地から又は隣地へ越境している現場があります。本来、境界がどこにあるのかという話と所有物が越境しているからどうするか、という話は別個のものです。しかし、境界確定する目的が土地の売買の場合、円滑に買主へ承継するためにも越境物の話は避けて通れません。

そこで、境界確認書に「~の部分は屋根が越境していることを相互に確認し、再建築等の際には境界線にかからないようにする~」などと書き入れたり、または覚書として別途書面をもらったりします。

ここで、「境界には同意するが、越境云々は気に入らない。だからハンコは押したくない。」と言われることがあります。ですので、弊所では境界の確定自体の依頼と越境の確認は別の依頼として報酬を頂戴し、また越境の確認にはリスクがあることを説明の上でお引き受けしています。幸いなことに、一度では同意いただけなくとも何度かご説明する中で同意いただけることが殆どです。ご理解の上でご依頼いただけると幸甚です。

(文責:庄田)

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