事例紹介

事例紹介2025.06.30.旅館業の事業譲渡の手続き緩和について

はじめに

多くのホテル・旅館では、コロナ禍を乗り越えて業績がコロナ前の水準に回復しつつあります。一方で、人材不足に悩む事業者も多く、特に地方では後継者の不在が深刻な課題となっています。

また、地方創生や観光立国政策の一環として、旅館再生を通じた地域活性化が行政によって支援されており、事業承継の重要性がますます高まっています。

こうした背景から、旅館業の事業承継に関する手続きも見直され、一定の条件を満たす場合には、承継による営業の継続がよりスムーズに行えるようになりました。 

承認申請の手続き

従来、旅館業の事業譲渡に際しては、譲渡人が廃業届を提出し、譲受人が新たに営業許可を取得する必要がありました。2023年12月13日に施行された改正旅館業法では、旅館業の事業承継に関する手続きが緩和され、譲受人があらかじめ承認手続きを行うことにより、事業譲渡による営業者の地位の承継ができることとなりました。

改正前
事業譲渡による事業承継では新たに許可をとりなおす
譲渡人:廃業届
譲受人:許可申請

改正後
廃業届や新規許可申請は不要
譲受人が都道府県知事等に承認申請し、営業者の地位を承継
譲受人:承継申請

引用:厚生労働省 事業譲渡に係る手続の整備 https://www.mhlw.go.jp/kaiseiryokangyohou/second_4.html?utm_source=chatgpt.com

 譲渡人は事業譲渡を行おうとする場合、管轄の保健所にあらかじめ相談するようにしましょう。申請は譲渡人と譲受人が申請を行う必要がありますが、いずれか一方が連名の申請書を提出することも考えられます。また、譲受人は、譲渡人が営業許可を受けた際に提出した図面や書類の控えを適切に管理することが求められます。

衛生管理と行政の監督

承継後、譲受人は衛生管理に関する一義的な責任を負います。事業の継続や従業員の雇用の維持等により、衛生水準を確保することが求められます。

また、都道府県知事等は、承継された日から6か月以内に少なくとも1回、業務の状況について調査を行うことになっています。この調査では、事業が継続されているか、施設・設備の基準を満たしているか、衛生管理が適切に行われているか等を確認します。 

その他注意点

その他には以下の注意点があります。

  • 原則として承継の前後で許可の内容は変更することはできません。ただし、譲渡の申請の際に変更の届出を行うことは可能です。
  • 営業の許可がされている事業の一部を譲渡する場合は規程の対象外です。
  • 申請書に添付する「旅館業の譲渡を証する書類」は譲渡が完了したことを証する書類ではなく、今後譲渡する旨を証する書類である必要があります。
  • 申請書に添付する定款及び寄付行為の写しは、事業譲渡に伴い定款等に変更があった場合、変更手続きが完了したものを提出する必要があります。
  • 譲渡の効力が承認より前に発生する場合は、新たに許可を取得しなければならず、承認制度は適用されません。
  • 事業譲渡後に施設の増設を行う場合、譲渡の手続きとは別に変更届を提出する必要があります。ただし、大幅な変更の場合、新規の許可が必要となることがありますのでご注意ください。

この法改正により、旅館業界では事業承継や再編の動きが活発化しています。また、M&Aを活用した事業承継も増加傾向にあり、専門家の支援を受けるケースも多く見られます。事業譲渡をお考えの方はご相談ください。

(文責:高橋)

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