事例紹介

不動産2025.06.2.表題部所有者欄に住所記載のない不動産の保存登記

はじめに

 登記簿謄本は大きく表題部(土地そのものの情報)と権利部(土地の所有者などの情報)に分かれており、まれにではありますが権利部の情報が全くない不動産を相続することがあります。こうした場合でも、表題部に記載のある所有者の氏名・住所と、亡くなられた方(被相続人)の氏名・住所の記載が一致すれば、戸籍や遺産分割協議書を準備し「所有権保存登記」をすれば通常の相続登記とほぼ同じ手順で登記をすることができます。

 一方で権利部に所有権の記載がなく、表題部にも所有者氏名のみが載っている状態で住所の記載がない場合もあります。こうした不動産の場合、氏名・住所の一致以外の方法で、表題部に記載の所有者と被相続人が同一人物であることを証明しないと相続人の方が登記をすることができません。昨年弊所にご依頼があった相続登記のご依頼の中にもこのようなケースが2件ございましたので、今回は簡単に事例を紹介いたします。

1 自宅に隣接する墓地を相続された方

 最初の事例はご依頼者様の曽祖父が所有者となっている墓地を相続された方です。自宅に近接した20㎡程度の土地を墓地として利用しており、母屋の土地建物については代々相続登記をされていたのですが、飛び地の墓地の登記が数世代にわたり見逃されていたようでした。

 登記情報のほかにも、旧土地台帳や閉鎖登記簿を取り寄せ、被相続人と所有者が同一人であること示す情報を探したものの、有力な情報はつかめませんでした。法務局に照会を行ったところ、墓碑・位牌・過去帳などになにか被相続人につながる情報があるか探してほしいとのご指示を受けましたが、そちらからも追加の情報は得られませんでした。

 最終的には10人以上の相続人様から被相続人と所有者が同一人で間違いないとする上申書にご署名と実印の押印をいただき、法務局に提出することで無事に登記をすることができました。

2 自宅建物の保存登記がされていなかった方

  次の事例は築50年以上経過している借地上のご自宅が、表題部のみの状態で保存登記がされないままになっていた事例です。こちらは被相続人は依頼者様の祖父でした。こちらの事例では相続人様のお一人が引き続きその建物に住民票上の住所としており、その旨を法務局の担当者に説明したところ、追加の資料を求められることなく登記申請をすることができました。このケースでも10人程度の相続人様から上申書へのご署名と実印の押印をいただきました。

おわりに

 昨年弊所で担当した案件は、対象不動産が現在のお住まいそのものであったり、お住まいの近隣に位置する土地であったりと、戸籍・住民票以外の資料がなくても法務局側にスムーズに事情を理解していただける事案であったと思います。ですが本籍地・住居地から離れた場所にある不動産を相続した場合は、上申書以外にも追加でなんらかの追加資料の提出を求められる可能性が高いと思われます。具体的にどのような資料・情報が証明につながるかは不動産の用途・現況などによって異なるため、事案ごとに法務局側に事情を説明しつつ申請前に打ち合わせを重ねる必要があるでしょう。

 また仮に上申書の添付のみで申請できるとしても、このような不動産の所有者は相続人様の祖父母・曽祖父母、場合によってはさらに前の代の先祖の場合もあります。戸籍の収集・相続人の特定だけでも大変な労力となり、通常の相続登記に比べると煩雑さは段違いです。このような不動産を相続した場合はご自身で登記をするのは難しいと思われますので、ぜひ神楽坂法務合同事務所にご相談ください。

(文責:安住)

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