事例紹介2022.12.19.先に作成された遺言と後に締結された死後事務委任契約の内容が抵触する場合の優劣関係
死後事務委任契約には法理論が確立されていない部分もある
死後事務委任契約とは、委任者が受任者に自己の死後の事務を依頼する契約です。頼れる家族がいない、あるいは、家族がいたとしても、様々な事情より、頼ることができないといった方が締結する契約です。しかし、この契約には、法理論が確立されていない部分も多くあります。その1つに、先に作成された遺言と後に締結された死後事務委任契約の内容が抵触した場合に、どちらが優先するのかという問題があります。この点について、地方裁判所において、注目すべき判断がなされたのでご紹介します。
令和3年2月25日函館地方裁判所の判決
今回ご紹介する判決は、遺言者が、特定の不動産を特定の相続人に相続させる旨の遺言をした後に、その遺言者が、当該不動産について当該遺言と抵触する結果となる死後事務委任契約を締結したという事案でした。
この事案において、函館地方裁判所は、「特定の財産を特定の相続人に相続させる旨の遺言をした場合であっても、遺言者は、当該遺言と矛盾・相反するとしても、生前に当該財産の処分、形状や性質の変更が自由にできる。そうすると、遺言者が、特定の財産を特定の相続人に相続させる旨の遺言をした後、遺言者が死亡時あるいは死亡後に、当該財産について当該遺言と矛盾・相反する結果となる死後事務委任契約を締結した場合であっても、遺言者が自由にできる財産の処分の一態様というべきであるから、後になされた死後事務委任契約が優先すると解するのが、社会一般の意識に沿うものであって、相当というべきである。」と判断しました。
最高裁判所の判断ではありませんが、法理論が確立されていない部分に関する1つの判断が示されたので、今後、この論点も含め、死後事務委任契約に関する議論が、より活発になっていくものと存じます。
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(参考資料)
谷口聡『死後事務委任に関する新論点を提示した裁判例 ―函館地判令和3年2月25日の検討―』(2022年11月10日)
(文責:佐々木)
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