事例紹介2021.01.18.尼寺と養子縁組(養子縁組その1)
ある尼さんの相続の事例です。
1.銀行の窓口で相続預金の引き出しをしようとしている場面です。
預金者Aの妹Bから、唯一の姉妹の姉Aが先日85才で亡くなり、相続預金の相続人は自分だけだから預金を引き下ろしたい、との申し出がありました。両親は既に他界しています。
銀行の窓口の担当者が、さらに詳しく聞いてみると、Aは子供の頃に神奈川県の尼寺の尼さんCと養子縁組をして後を継ぎ、終生尼さんとして過ごしていました。Aには子供はいません。
ところが、養親のCさんにはもう一人の養女Dとも養子縁組をしていて、この方Dは、別の尼寺で今も尼さんをしていることが分かりました。
尼寺では、このように、養女を何人か迎えることが往々にしてあるのです。
この場合、もう一人の養女DはAの相続人になるのでしょうか。
養子は、養子縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得するとともに、養親の血族とも親族の関係が生じます。
養親に養子縁組した二人の養女がいる場合、養子と養子はお互いに血縁関係がなくても二人の関係は、法定血族として親族の姉妹関係になります。
つまり、Aの相続人は、実の妹であるBのほかに、養親Cと養親のもう一人の養子Dの3人になります。
従って、この銀行では、C、Dの同意も必要であることを説明した上で、実際の手続は、預金金額も少額であったため、代表相続人Bに対して念書をもらい、了解の上、引き出しの処理を行いました。
2.2人の養子縁組が記載されている戸籍謄本の見本例を、以下のポイントを踏まえて見てみましょう。
① 上記の例で、養親Cは鎌倉慶子、被相続人Aは鎌倉洋子、養親Cの2人目の養子Dは鎌倉和子とします。
② 2人の養子縁組の日にちは異なっています(1年違い)
③ 養子縁組の場合、気を付けなければいけないのは、その後、離縁したかどうかです。離縁をすればその旨戸籍謄本に記載されます。本件では2人とも離縁していません。
氏 名 | 鎌倉 慶子 ← 養母C(尼さん)です |
戸籍に記載されている者 | 【名】慶子 |
戸籍に記載されている者 |
【名】洋子 ← 養子に行ったAさんです 【生年月日】昭和52年10月1日 【父】〇〇 【母】○○ 【続柄】長女 【養母】鎌倉慶子 【続柄】養子 |
身分事項 出 生 養子縁組 ⇣ その後離縁していない ことを確認しましょう。 |
【出生日】昭和52年10月1日 【縁組日】昭和59年3月30日 【養母氏名】鎌倉慶子 |
戸籍に記載されている者 |
【名】和子 ← 養子に行ったDさんです 【生年月日】昭和55年1月1日 【父】△△ 【母】△△ 【続柄】二女 【養母】鎌倉慶子 【続柄】養子
|
身分事項 出 生 養子縁組 ⇣ その後離縁していない ことを確認しましょう。 |
【出生日】昭和55年1月1日 【縁組日】昭和60年3月30日 【養母氏名】鎌倉慶子 |
文責:鈴木、庄田
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