登記2017.09.8.民事信託について③
前回、前々回に引き続き、
民事信託を勉強しようというコーナー。
今回は第3回目。
改正された信託法において新たに認められた信託の種類や制度について解説します。
新たに認められたとされる信託は諸説ありますが、一般的には8種類あります。
①遺言代用信託
委託者兼当初受益者死亡後の受益者を決定しておく信託
②受益者連続型信託
受益者を何代も先まで当初の信託設定の段階で決めておく信託
③自己信託
委託者と受託者が同一である信託
④目的信託
信託設定の段階で受益者が決まっていない信託
⑤事業信託
債務を伴う「事業」を信託財産とする信託
⑥限定責任信託
受託者の責任を信託財産の範囲内に限定する信託
⑦担保権信託
受託者が複数受益者のために担保権を一括管理できつ信託
⑧受益証券発行信託
受益権を細分化して有価証券化する信託
これらに関する基礎知識を順次紹介します。
①遺言代用信託
これは自益信託の場合の委託者兼当初受益者が、信託設定の段階で自分が死亡した後の「受益者を指定しておく、すなわち委託者の死亡を条件に自益信託から他益信託になるという信託設定方法(信託法90条1項①)、あるいは当初から他益信託とするが受益者が信託財産から給付を受けられる時期が委託者死亡時以降であるとする信託設定方法(信託法90条1項②)です。
一般的にはわかりやくす「遺言代用信託」といわれていますが、実質的には遺言というより、死因贈与契約に極めて近い内容です。
第①号の場合は、当初は自益信託であり、当初受益者(兼委託者)の死亡によって、その受益権が第二受益者に相続されるような形となり、まさに遺言と同様の機能が発揮できます。
それに対して、第②号の場合は、当初から委託者と受益者が別人、すなわち、委託者から受益者に対する生前贈与が行われていることになり、ただその受益権の行使に関して、委託者の死亡の時以後でなければ実行できないことになっているという設定方法なので、受益者の権利が確定しているという点で遺言より強力な効果があります。
②受益者連続型信託
これはまさに改正された信託最大の目玉といえる画期的な信託設定補法であり、現行民法上での遺言の範疇では絶対に実現不可能であったことを実現できる可能性を提供した内容であります。
ようするに遺言代用信託をさらに進めて、信託設定時に何代も先の受益者候補を、当初の委託者が決定しておけるということであり、民法の相続制度そのものを覆すものとなっています。
世間では、親から子に、子から孫に、自分の直系血族にのみ財産を相続させたい、裏返して言えば「姻族に財産を流したくない」という、まさに戦前のわが国の常識であった「家督相続」を求めるニーズが強く残っており、それは我が国の国民感情の沿った極めて正当な考え方です。
しかし、現行民法の相続制度においては、親から子への遺言は可能ですが、それ以下を継承させることが難しく、姻族側に財産が流れてしまう事を防ぐことが不可能でした。
それが、この受益者連続型信託を活用することにって「家督相続」を実現できることになったのです。
信託法91条を見ると、受益者連続型信託には次の二つの定め方があることがわかります。
①受益者が死亡した際には受益権が消滅し、次順位に定められた受益者が新たに受益権を取得する定め。
②受益者の死亡によって受益権が、次順位に定められた受益者に引き継がれる定め。
ただし、91条後段にあるように、「30年ルール」が存在し、永久に財産の取得者を定め続けることはできません。
信託設定後30年経過時点における受益者が指定した次の受益者が最終の受託者となり、それ以降の受益者連続はみとめられないということです。
しかし、世代が代わるごとに巻き直せば、事実上は永久に近い効力を持たせることは不可能ではないということです。
一度に沢山の事を勉強すると頭がパンクしてしまうので、今日はこんなところで。
See you next time!!
(文責:角谷)
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