事例紹介2024.01.15.未登記家屋は相続登記義務化の対象になるか
土地や登記されている建物について、令和6年4月1日以降は相続登記の申請義務が生じます。では、登記されていない建物はどうなのでしょうか。
まず未登記建物とはどういうものなのかご説明します。
土地や建物を所有している場合、毎年5月頃になると、市区町村から固定資産税・都市計画税の請求書が所有者に郵送されます。請求書には納税通知書(課税明細書)が添付されており、所有する土地・建物の詳細と、それぞれの固定資産税評価額等が記載されています。そして、建物には「家屋番号」という欄があり、100番など数字が記載されています。
一般的には、その家屋番号が記載されていれば登記済みである可能性が高く、家屋番号が空欄の場合は、ほぼ確実に未登記の建物です。はっきりと「未登記」と記載されていることもあります。
ただし、市区町村の管理のために未登記家屋に独自の番号を付している場合や、誤記や、現状と大きく乖離して昔あった建物の家屋番号などが記載されている場合もあるので、注意が必要です。
建物が登記済みかどうか確実に判断するには、登記簿謄本を法務局に請求する必要があります。もし請求しても該当する建物の謄本はないというのであれば、それは未登記建物です。
また、建物を建てる際に金融機関から融資を受けている場合、抵当権などの担保の登記を入れる必要から、建物の登記はきちんとされているはずです。融資を受けずに建物を建てた場合などは、登記をしていないことがあります。
さてそれでは、未登記建物は相続登記申請の義務化の対象になるのでしょうか。
結論としては、未登記建物は相続登記申請の義務化の対象にはなりません。相続登記申請の義務化に関する不動産登記法第76条の2の1項を読んでみると、以下のように書かれています。
(相続等による所有権の移転の登記の申請)
第76条の2
1 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
この「登記名義人」とは、登記記録の「権利部」の権利者を指します(同法第2条第11号)。したがって、「権利部」がある不動産についてのみ「登記名義人」は存在します。未登記の建物は「権利部」がない(そもそも登記されていない)不動産ですので、「登記名義人」はいません。よって、相続登記申請の義務化に関する上記の規定は未登記の建物には適用されません。
それでは未登記建物は登記しないままでいいのかということですが、こちらはあくまで自己責任でご判断いただくものになります。なぜなら、相続登記申請の義務化とは別に、次の規定の建物についての表題登記の申請義務があるからです。
(建物の表題登記の申請)
不動産登記法第47条
新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1月以内に、表題登記を申請しなければならない。
さらに、この表題登記の申請義務に違反すると10万円以下の過料に処せられます(同法第164条)。ただし、この理由で過料に処せられたという事例はなく、ほとんど形骸化しているのが現状です。
しかし、昨今の相続不動産の社会問題化の影響を受けて、この規定が息を吹き返し、相続登記申請未了という理由ではなく、表題登記申請義務違反という理由で過料を科せられる可能性はゼロとは言えません。
ご自身の相続した不動産の登記でお困りの方は、表題登記の専門家である土地家屋調査士や登記の専門家である司法書士にご相談されることをお勧めします。
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