事例紹介

不動産2021.10.11.配偶者居住権を取得したら登記をしましょう

配偶者居住権とは

民法が改正され、2020年4月1日に施行されたことをご存じでしょうか。

そこで新しく法定されたのが「配偶者居住権」です。

遺産相続の選択肢のひとつとして、夫婦の一方が亡くなった際に、残された配偶者が今まで住んでいた住居に、亡くなるまで又は一定の期間住み続けることができる権利です。

高齢化社会において残された配偶者の居住権を守り、さらに生活資金の確保も見込めるものであると考えられます。

 

なぜ登記が必要なのか

配偶者居住権は、遺言にその旨を記載しておくか、遺産分割協議等で権利を取得します。

無償で住み慣れた住居に住むことができる大事な権利を守り、対外的に第三者にもその権利を主張していくために必要なのが登記手続きです。

 

例えば、夫が亡くなり、夫が所有していた現在の住居が相続対象になるとします。

遺産分割協議で、妻であるAさんには「配偶者居住権」が、その一人息子には住居の「所有権」が相続されることになりました。

ここで一人息子の所有権には配偶者居住権が付与されているため、「負担付き所有権」となります。

本来であれば配偶者居住権が付与されていること、つまり負担付き所有権であることを登記する必要がありますが、登記しない場合は第三者に権利を主張することができないため、こんな事態が予想されます。

 

Aさんが住んでいるのにも関わらず、一人息子が金銭を工面するために第三者に住居を売ってしまいました。

Aさんが住んでいることは伝えられておらず、「配偶者居住権」が付いている不動産だったことは登記されていないため、第三者は知り得ません。

民法では第三者保護の規定もあるため、場合によっては一人息子が勝手に行った売買契約が有効となり、住んでいた住居を明け渡さなければならなくなります。

(損害賠償請求など、他の側面から訴えることができる可能性はあります。)

 

先に登記さえしておけば登記の先後で優劣が決まるため、不動産の所有者が変わっても配偶者居住権を主張して当初決定した期間は引き続き住み続けることができます。

長期に渡って住む場合は単に配偶者居住権が付与されたことで安心せず、必ず登記手続きを行いましょう。

 

登記の注意点

①配偶者居住権設定登記は、配偶者単独では行うことができません。

必ず負担付き所有権を取得することになる所有者と共同で登記手続きをする必要があります。

所有権移転登記を済ませておく必要があります

所有権移転登記と配偶者居住権設定登記を同時に行うこともできます。

③登記できるのは建物のみで、敷地である土地には登記できません。

④亡くなった方がその住居を配偶者以外と共有していた場合、配偶者居住権の対象にはなりません。

配偶者が亡くなり、残された方を守るために法定されたこの権利。

長期居住予定であれば、登記によって配偶者居住権という権利のメリットをしっかり享受してください。

 

(文責:坂本)

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