事例紹介

事例紹介2021.02.1.節税対策の養子縁組(養子縁組その2)

数年前の最高裁の初判断(平成29年1月31日)があります。高裁判決を覆しました。

養子縁組は、節税のためにも行われる場合があります。

ここでは、いわゆる節税を目的にした養子縁組について親族間で最高裁まで争われた事例を紹介します。

 

 

概要

相続税対策を理由に、孫を養子にした男性(故人)の養子縁組が有効かどうか争われた訴訟で、最高裁第三小法廷は、平成29年(2017年)1月31日、「節税目的の養子縁組であっても、ただちに無効にはならない」とする初めての判断を示しました。

 

「節税目的の養子縁組は無効」とした前年(平成28年)2月の二審・東京高裁判決を破棄し、「有効」とした一審・東京家裁判決が確定しました。

ちなみに、最高裁は、二審の結論を見直す際に必要な弁論を開いています。

 

この事案は、当時1歳だった孫を養子にしています。この孫は、長男の息子です。

養子にすることで、法定相続人が1人増えて相続税の非課税枠が広がると共に、

長男一家の相続分が増えることにメリットがあったのです。

 

しかし、これに対して男性の実の娘らが、男性の死後に「養子縁組は無効だ」として提訴したのです。

 

裁判所の判断~養子縁組は有効か?~

一審の東京家裁の判決は、男性が養子縁組の書類に自ら署名をしていることなどから、「養子縁組の意思があり有効」と判断しました。

 

一方、二審の東京高裁判決は、孫を養子にすることで節税効果があるとの説明を男性が税理士から受けていた点を指摘しました。

その上で、「養子縁組は節税が目的で、真の親子関係をつくる意思はなかった」として無効としました。

 

最後の最高裁第三小法廷は、「節税目的と養子縁組をする意思は併存しうる」と指摘しました。

その上で、専ら節税のためであっても、ただちに民法が養子縁組を無効にできると定めた「縁組の意思がない時」に当たるわけではない、と述べています。

 

また、今回のケースでは「縁組の意思がなかったとうかがわせる事情はない」として、養子縁組は有効であると結論づけています。

 

以上が、裁判所の見解です。

 

 

節税と養子縁組~実際にはどうなのか?~

もっとも、現実には節税を目的にした養子縁組は広く行われています。

相続税は、現在3千万円に法定相続人1人あたり600万円を加えた金額が非課税となっています。

従って、法定相続人の人数が増えればその分非課税枠が広がることになります。

まさにここが節税の考えなのです。

 

養子縁組で非課税枠を広げる手法は以前から使われてきました。

過去には10人以上を養子に迎えた例もあって問題化したこともあります。

その後、税制改革を経て、現在では養子縁組で法定相続人にできる人数が、

 

① 被相続人に実の子供がいる場合は1人まで

② 被相続人に実の子供がいない場合は2人まで

 

に制限されています。

ただし、養子の数を法定相続人の数に含めることで、相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合、その原因となる養子の数は、上記①又は②の養子の数に含めることはできません。

(文責:庄田、鈴木)

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