相続・遺言2025.09.1.認知症チェックテストと後見の目安
はじめに
後見の申立には主治医の診断書を添付しますが、診断書に直接的に「後見相当」や「補佐相当」と記載されない場合もあります。後見申立の際に提出する診断書は裁判所が作成した書式に記載することになりますが、明確に「判断することができない」や「いつも障害がみられる」などの項目にチェックがあれば後見相当との判断もつきます。一方で部分的に悪い・良いなどの状況では後見にするのが良いか保佐にするのかなど決めかねる場合もあるかと思います。
一方で診断書には認知症チェックテストの結果を記載する欄もあり、これが後見・保佐・補助のいずれを選ぶかの一つの目安になるので、今回はチェックテストについて取り上げます。
認知症チェックテストの目安
現在行われている主要な認知症チェックテストとしては、長谷川式認知症スケールとMMSE(ミニメンタルステート)検査が挙げられます。各テストの内容について詳細な説明は省きますが、いずれも対象者に質問に答えていただく方式の検査で、比較的簡単に実施が可能です。点数が低いほど認知能力が低いという点も共通しています。
二つの検査の目安は下記の通りです。
長谷川式認知症スケール(30点満点)
軽度の認知症………19点前後
中度の認知症………15点前後
重度の認知症………10点前後
非常に高度…………4.0点以下
※20点以下で認知症疑い
MMSE検査(30点満点)
軽度の認知症………21点以上
中度の認知症………20点~11点
重度の認知症………11点以下
※27点以下は軽度認知障害疑い、23点以下は認知症疑い
後見の種類と症状との関係
認知症診断テストの点数と後見・保佐・補助の対応関係について、家庭裁判所から公的な見解が示されているわけではありません。しかし一般的には診断テストの点数が重度相当の場合は後見、中度相当の場合は保佐、軽度相当の場合は補助に該当すると判断される場合が多いです。
認知症テストの結果は数値化されますので、わかりやすい基準ではありますが、それだけを判断基準として後見申立をすることはおすすめいたしません。後見・保佐・補助にもそれぞれ特色があり、ご本人やご家族などのニーズに合わせて申立をすることが必要になりますので、テスト結果は一つの基準・目安として参照していただければと思います。認知症疑いや軽度認知障害の段階では、任意後見も選択肢として検討すべきと考えます。
終わりに
診断テストという客観的でわかりやすい指標と、ご本人の実情・ご希望やご家族・関係者のご希望に相違がある場合には申立て準備の段階で、しっかりとした検討や準備が必要です。
神楽坂法務合同事務所では成年後見に関するご相談も受け付けておりますので、お困りの際はお気軽にご相談ください。
(文責:安住)
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