事例紹介2017.11.19.小規模宅地の特例のための登記について
相続税における小規模宅地の特例は非常に大きな効果がありますので出来れば使いたいところです。しかし、いくつかの要件を満たさないと適用できません。中でも、親族との“同居”が問題になる場合、建物の登記が必要なことがあります。
当初から住宅が単独所有または共有であれば問題ありません。
具体的には、①建物が区分建物として登記されている場合、②別々の建物として登記されている場合に問題になることがあります。
ケース1 区分建物として登記されている場合
解決策→建物合併登記で非区分建物(普通の1戸建)へ登記を変更する。
条件① 建物が物理的に接合していること
※新築時から区分建物であり、その後何も工事等をしていなければ原則問題ありません。
条件② 所有者が同一であること
所有者が同一とは、建物(専有部分)が2つある場合、登記簿上の氏名、住所、持分まで全て同じであるということです。
専有部分A
|
所有者 甲 | 共有者 甲3分の2
共有者 乙3分の1 |
共有者 甲3分の2
共有者 乙3分の1 |
専有部分B | 所有者 乙 | 共有者 甲3分の2
共有者 乙3分の1 |
共有者 甲2分の1
共有者 乙2分の1 |
合併登記の可否 | × | 〇 | × |
所有者が違う場合には所有権を移転して同一の所有者にすれば合併登記できますので、前提として所有権移転等の登記が必要になります。
条件③ 所有権の登記以外の登記が存在しないこと
例外その1:担保権(抵当権等)の登記であって、登記の目的、受付年月日、受付番号、登記原因とその日付まで同一であれば登記することが出来ます。
例外その2:信託の登記で、委託者や受託者、その他信託における事項が全て同一であれば登記することが出来ます。
注意事項
1 現地調査と面談が必要です。
2 登記簿の住所と現在の住所が違う場合には前提として住所変更登記が必要になります。
必要書類一覧
①権利証(建物)、②所有者の印鑑証明書(3か月以内)、③建築確認通知書(既存建物)、④本人確認書類、⑤実印、※前提として移転等がある場合は⑥所有者の住民票、印鑑証明書、⑦評価証明書または課税明細書
ケース2 建物が別々の建物としてそれぞれ登記されている場合
解決策①→工事をして、壁を壊したり、増築したりすることで物理的に一つの建物にし、登記も一つにします。この場合の登記を建物合体登記といいます。
条件① 物理的、客観的にみて一棟の建物となっていること
条件② 抵当権等の権利が付いていないこと
例外:抵当権者等の承諾書があること
※建物合体登記は所有者が異なっても登記することが出来ます。
注意事項
1 工事は信頼のおける業者で施工し、基本的に建築確認申請をする必要があります。
2 工事完了後、現地調査と面談が必要です。
3 抵当権等がある場合、工事前に銀行と打合せをする必要があります。場合によっては許可が出ないこともあります。
4 建物の所有者が別々であった場合、合体後は共有することになります。持分は自由ですが、基本的には固定資産税評価額に応じて共有します。
5 登記簿の住所と現在の住所が違う場合には前提として住所変更登記が必要になります。
必要書類一覧
①権利証(建物)、②所有者の印鑑証明書(3か月以内)、③所有者の住民票、④建築確認通知書(既存建物)、⑤本人確認書類、⑥実印、⑦評価証明書または納税通知書、※増築した場合⑧建築確認通知書、工事完了引渡書、※抵当権等がある場合⑨承諾書(印鑑証明書付)
解決策②→新築時から物理的に接合している建物が別々に登記されている場合には、それぞれの登記簿を一度消し、一つの建物を共有しているものとして登記しなおす方法があります。所有権保存登記抹消登記→建物表題登記→所有権保存登記となります。
条件① 表題部所有者が所有権保存登記をし、その後何の登記もしていないこと。
条件② 抵当権等の登記が無いこと。完済していれば可能です。
条件③ 物理的客観的に1棟の建物と認められること。
注意事項
1 現地調査と面談が必要です。
2 登記簿の住所と現在の住所が違う場合には前提として住所変更登記が必要になります。
3 この登記が申請できる事例は非常に限られます。建物の現況によっては現地調査の結果、登記できない場合もあります。
必要書類一覧
①権利証(建物)、②所有者の印鑑証明書(3か月以内)2通、③所有者の住民票2通、④建築確認通知書(既存建物)、⑤本人確認書類、⑥実印、⑦評価証明書または納税通知書
まとめ
かなり専門的でしたが、二世帯住宅の方には需要のある登記のお話でした。なお、この登記を全てするためには司法書士と土地家屋調査士の資格と経験が必要になります。お困りの方は是非ご相談ください。
文責:庄田
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