事例紹介

不動産2025.07.14.事例紹介:死因贈与仮登記の混同抹消

はじめに

 死因贈与とは不動産の所有者の方がなくなった際に、効力が発生する贈与契約を言います。この死因贈与は仮登記をすることができ、それにより贈与者(財産を渡す方)の死後、受贈者(財産を受け取る方)が確実に不動産を受け取ることができるように準備ができます。ただし、契約が履行されないまま仮登記が残ってしまう場合があり、仮登記が残っている状態ですと不動産を処分する際に支障があります。今回弊所で担当した事案に数十年前の死因贈与の仮登記(始期付所有権移転仮登記)が残っていたケースがありましたので、ご紹介いたします。

不動産の状況

 対象となった不動産は当初、相続登記のみをご依頼いただいた物件でした。依頼者の方とお父様、お母様、お兄様がそれぞれ4分の1ずつ持分を持っており、お父様とお母様が亡くなられたため依頼者の方が持分4分の2を相続する予定でした。しかしこの不動産に以前の所有者である母方の祖母からお母様に対する死因贈与の仮登記が残っていました。

 この死因贈与仮登記は昭和50年代に登記され、その数年後に家族4人に贈与されていました。当時の細かな事情はわからずじまいでしたが、何らかの事情で最初の予定とは異なる話し合いが家族間であったのだと思われます。この家族4人への贈与の登記がされた際に、併せて仮登記も抹消されていれば問題にはなりませんでしたが、そのまま残った状態で数十年が経過してしまいました。

解決までのプロセス

 今回のケースですと仮登記義務者と仮登記名義人が共に亡くなっており、仮登記の登記済証(権利書)など当時の資料が全て見当たらないという状況でした。確実に抹消する方法としては裁判を経る方法と、権利を依頼者の方に集めて混同抹消する方法が考えられましたが、後者の方法であれば当事者間の話し合いで済むのでこちらを提案させていただきました。幸いお兄様も不動産を依頼者の方が取得・管理することには異存がなかったので、比較的スムーズに書類作成をすることができました。

実際に行った手順は下記のとおりです。

①お母様の持分とお母様の仮登記名義人としての地位を依頼者の方が相続する協議書を作成

②お父様の持分を依頼者の方が相続する協議書を作成

③お兄様の持分を依頼者に贈与する契約を締結

④上記に基づき、持分移転と所有者移転仮登記の移転を法務局に申請

⑤所有者と仮登記名義人が共に依頼者の方になったので、混同抹消を申請

 

 ④と⑤は連件で申請し、問題なく仮登記が抹消されました。また⑤について登記原因証明情報の添付は省略しました。

おわりに

 今回の不動産は仮登記が残っていたほかにも、依頼者の方とお兄様の住所変更が取得時からされていないなどの問題もあり、同時に申請しなければならない登記がかなり多くなってしまいました。仮登記の抹消に限らず、必要な登記は常に早めに行うことをお勧めします。長期間、必要な登記をせずに放置してしまった不動産がある場合は、是非神楽坂法務合同事務所にご相談ください。

(文責:安住)

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