事例紹介2025.01.15.確定拠出型年金(iDeCo)と遺言・相続について
はじめに
確定拠出年金(以下iDeCo)は平成13年に新しく始まった制度です。iDeCoは原則60歳になるまで、積立金を引き出すことができませんが、積立中や受給中に加入者の方が亡くなった場合はどうなるのでしょうか。今回は加入者の方が積立金を遺す場合と、加入者の方が亡くなられた場合の対応についてご説明します。
遺言と確定拠出年金
iDeCoの加入者の方が亡くなられた場合、残高は「死亡一時金」として遺族の方に支払われます。しかしiDeCoの死亡一時金は法令上、相続財産にあたりません。死亡一時金は確定拠出年金法に従い受取人が決定され、支給されます。そのため原則としては遺言書にiDeCoについて記載したとしても、その内容従って分けるということはできません。
しかし加入者の方が生前に受取人を指定した場合は、指定を受けた方が受け取ることになります。この受取人の指定は遺言書等に記載するのではなく、金融機関等に届け出る必要があるので、お手続きについてはiDeCo口座をお持ちの金融機関にご確認ください。また指定できる方は配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の中から指定しなければならず、通常の遺言のようにある程度自由に受取人を指定することはできないという点にも注意が必要です。
相続時における確定拠出年金の扱い
上述のとおり、iDeCoの死亡一時金は相続財産にあたりません。受取人が指定されていた場合は指定された方が受け取ります。受取人が複数いる場合は均等に分割することになりますが、手続きは代表者を立てて行います。
受取人が指定されていない場合に、受取人となる方の順番は下記の通りです。
第1順位:配偶者(事実婚を含む)
第2順位:加入者によって生計を維持されていた子供、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹
第3順位:第2順位の人以外で、加入者によって生計を維持されていた6親等内の血族と3親等内の姻族
第4順位:第3順位以外の子供、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹
受取人となる親族の順位付けや配偶者に事実婚を含むなど、公的年金や健康保険などから支給される一時金の受取条件と共通する部分が多いのが特徴です。受取人となった方は金融機関等に給付の申請をする必要があります。
死亡一時金の受け取りは基本的には上記ご親族が受取人となりますが、例外として相続開始後5年間、死亡一時金の請求をしなかった場合は扱いが異なります。この場合、死亡一時金の請求ができなくなり、残高が相続財産となります。相続財産になった後であれば、遺産分割協議により相続人間での分割ができる一方で、相続人には該当しない方や相続放棄した方が受け取ることはできなくなります。受取人となっている方は期間内にお手続きをすることをおすすめいたします。
終わりに
iDeCoで積み立てているお金は、遺言書で相続人を決めることができません。ご希望通りに財産を残したい場合には、お手持ちの財産に応じた遺言書を作成するほか、相続財産にならないものについては正しいお手続きを経る必要があります。
お困りの際には是非、神楽坂法務合同事務所にご相談ください。
(文責:安住)
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