事例紹介

事例紹介2024.11.15.有効な遺言書がある場合の遺産分割協議について

はじめに

遺言書は亡くなられた方(被相続人)の遺志であり、法律上もその遺志が尊重されるように定められています。しかし相続人の方にとって遺言書の内容が、必ずしも納得の行く内容でないことは多々あります。相続の手続きにおいて遺言書の効力は大きなものですが、一定の条件を満たせば遺言書と異なる内容の遺産分割協議をすることも可能です。

遺産分割協議の参加者

遺言書の内容と異なる遺産分割協議であっても、原則的には相続人全員の合意があれば成立します。ただしすでに遺言執行者が選任されている場合や相続人以外にも受遺者がいる場合は例外で、遺言執行者や受遺者の同意を得ることが必要です。
遺言執行者の同意は遺言書で指定された場合と家庭裁判所で選任された場合の双方でその合意が必要です。遺言執行者は遺言の内容を実現する責任を負いますが、相続人全員が合意している場合に遺産分割協議の内容に同意することは、問題ないと考えられています。
相続人以外の受遺者がいる場合には、その受遺者が遺贈を放棄することが必要となります。遺贈の放棄は遺言書で遺贈される財産の指定の有無で手続きが異なります。不動産など特定の財産の遺贈の場合(特定遺贈)、受遺者はいつでも遺贈を放棄でき、相続人か遺言執行者に意思表示をします。遺産を指定せず、財産の全部又は何割を遺贈するとされた場合(包括遺贈)、裁判所に放棄の申述書を提出します。これは相続の開始を知ってから3ヶ月以内にしなければならず注意が必要です。

遺言書で遺産分割協議が禁止される場合

一方で相続人全員が合意しても、遺言書で遺産分割を禁止されている場合は遺産分割協議をすることはできません。
遺言者は相続の開始から5年以内の期間を定めて遺産分割を禁止することができます。遺言書で5年以上の期間を定めて遺産分割を禁止している場合にも、禁止の文言は無効にならず、禁止期間は5年となります。また分割を禁止する財産の範囲を遺言書で定めることもできます。

おわりに

遺言書に反する内容の遺産分割をすることは可能ですが、受け取れる遺産の額が減ってしまう相続人や受遺者の方に内容を納得していただくのは難しい作業となります。お話し合いが大きくこじれた場合のリスクも考慮しつつ、通常の遺産分割協議以上に慎重かつ丁寧なお話し合いをすることが大切になるでしょう。
通常の相続にはない法律上の制約もありますので、お困りの際は神楽坂法務合同事務所に是非ご相談ください。

(文責:安住)


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