事例紹介

不動産2024.11.1.休眠担保権の抹消について

休眠担保権について

相続登記をしようと不動産の謄本を取ったら抵当権が付いていたなど、謄本を取って初めて分かったということはよくあります。
住宅ローンを完済した場合などに抵当権を抹消するのが一般的なパターンですが、明治時代や大正時代など大昔に設定された抵当権も稀にあります。
完済しているかどうかもわからない、抵当権者(債権者)もどこにいるのかわからず、生存しているかも分からない行方不明の状態。こういったものを休眠担保権といいます。

休眠担保権が付いたままの不動産は売却ができませんので、早急に休眠担保権の抹消登記をしておく必要があります。
通常、抵当権抹消登記は、不動産所有者と抵当権者との共同申請で行うのが原則です。
抵当権者に連絡がつくのであれば、共同申請で抵当権を抹消できます。
しかし、抵当権者の協力を求めたくても行方不明などで事実上協力を得られない場合はどうしたらよいのでしょうか。

抵当権者が行方不明の場合

抵当権者を調査しても行方不明の場合の、休眠担保権の抹消登記申請は、不動産所有者が単独申請できる4つの方法があります。

(1)弁済証書による抹消方法
(2)供託による抹消方法
(3)除権決定による抹消方法
(4)判決による抹消方法

単独申請できる4つの方法

(1)弁済証書による抹消方法

完済した証拠書類(債権証書、並びに、債権及び最後の2年分の利息その他の定期金の受取証書)を法務局に提出する方法です。
書類が残っていれば、これが一番早くて費用もかかりませんが、現実には昔に完済した書類を保管されていることは稀です。

(2)供託による抹消方法

①先取特権、質権または抵当権に関する登記の抹消申請であること

譲渡担保権や元本確定前の根抵当権などは対象となりません。

② 登記義務者の所在が知れないために共同申請ができないこと

登記義務者(担保権者やその相続人)の住所を調査し、配達証明付きの郵便を送ります。
この郵便が「あて先不明」で返送されて来たら、登記義務者の所在が知れないことの証拠資料として、登記申請の際に添付します。
なお、登記義務者が法人の場合には、登記簿がすでに廃棄されていて何らの登記記録も残っていない場合に「所在不明」とされます。法人自体はもうなくなっていたとしても、閉鎖登記簿等が取得できる場合には、この方法は利用できません。このような場合には、法人の清算人の行方を調査したり裁判所に清算人の選任申立てをしたうえで、共同申請するなり、上記手段1の提訴する方法を採るなりする必要があります。

③ 被担保債権の弁済期から20年を経過したこと

原則として、弁済期を証する情報(金銭消費貸借契約書など)が必要となります。
ただし、昭和39年の不動産登記法改正前は、弁済期が登記事項となっていため、これが閉鎖登記簿から確認できる場合には、閉鎖登記簿を添付します。
添付できる書面がない場合には、債務者の申述書でも良いとされています。

④ ③の期間経過後、債権・利息・損害金の全額に相当する金銭を供託したこと

明治や大正時代に設定された担保権の場合、現在とは貨幣価値が違うため、債権額が「数十円」などということもあります。この場合でも現在の価値に換算するわけでなく、当時の債権額をもとに金額を計算しますので、供託金額も少額で済み、この手続きを利用するメリットがあります。
逆に、近年に設定された担保権で債権額が大きく供託金額が高額になってしまう場合には、この手続きは使いづらい面があります。

(3)除権決定による抹消方法

裁判所に公示催告の申立を行い、除権決定を得る方法です。
債務が消滅していることが必要であり、数カ月の期間がかかります。
現実にはあまり利用されません。

(4)判決による抹消方法

裁判所に訴訟を起こして、判決を得て抹消登記をする方法です。
この方法は、担保権者から登記申請の協力を得られない場合でも、担保権者が行方不明の場合でも利用できます。
ただし、裁判には少なくとも数カ月単位の時間が必要となります

おわりに

債権者が法人なのか自然人か、行方不明かどうか、弁済期から20年以上経っているか等パターンごとで対応方法が変わります。
個人での休眠担保権抹消はかなり難しい手続きですので、是非専門家へご相談ください。

(文責:松井)


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