事例紹介

不動産2024.09.17.日本に住民登録がある相続人が海外にいる場合

日本に住民登録をしたまま海外で暮らしている相続人が諸事情により日本に帰れない場合、相続手続きはどうしたらいいでしょうか。
先日、不動産の相続登記でご依頼いただいた方の事例をご紹介します。複数人の相続人のうち1人が海外におり「戻るつもりであったが諸事情でしばらく戻ることができなくなったため、どうしたらいいでしょうか」とご相談を受けました。

日本に住民登録していない場合

通常、1年以上の海外赴任が決まっている場合、住民登録している自治体へ「海外転出届」を提出し、住民基本台帳から住民票を除票する必要があります(印鑑証明書も取得できなくなります)。その場合には、海外に所在する日本の在外公館で、「署名証明書」を取得していただいております。署名証明書は日本の印鑑証明書に代わるものとして日本での手続きのために発給されるもので、申請者の署名と押印(拇印)が領事の前でなされたことを証明するものです。通常、住んでいる海外の住所と氏名を自署し、拇印を押します。

Aさんの場合

外務省のHPによると「日本に住民登録をしていない海外に在留している方に対し」と記載があります。Aさんは住民登録は日本のままでしたので、署名証明は対応できないのではないかと思われました。
さらに、日本での印鑑登録が未登録とのこと。代理で登録することも可能ですが、代理で印鑑登録をする場合、委任状をもらって代理人が窓口で申請⇒本人の自宅へ照会書兼回答書が送付されるので、再度申請した窓口へ必要書類を持参する必要があります。留守の間、転送の手続きをしている場合には、役所に返戻されてしまいます。まず、この照会書が受け取れるかどうかが問題であることと、申請の翌日から20日以内に照会書を持参しなければいけないという、日数的な縛りが問題でした。EMSなどで送ったとしても、あまりにタイトなスケジュールで登録も難しいかもしませんというお話をしました。

問い合わせてみたところ

ところが、Aさん本人が最寄りの領事館に確認したところ、署名証明を発給してくれるということになり、遺産分割協議書を送って形式1(在外公館が発行する証明書と申請者が領事の面前で署名した私文書を綴り合わせて割印を行うもの)にて署名証明を作成していただきました。日本の住所と氏名を記載して署名証明書を作成したのですが、これで果たして登記ができるのか、ということで法務局に事前に照会をしました。法務局からは住民票(もしくは戸籍の附票)も一緒に添付してもらえれば大丈夫との回答をいただき、無事登記をすることができました。

おわりに

今回は、海外にいるAさんは不動産を取得しなかったことやご本人の事情などから無事に登記することができたと思われます。必ず登記できるということではないので、同じような事例があった場合は、事前に管轄法務局に照会されることをおすすめします。

(文責:高橋)

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