事例紹介

不動産2022.04.5.相続登記の申請の義務化の概要

はじめに

令和3年不動産登記法改正により相続登記の申請が義務化されました。今回はそのおおまかな概要をお話しようと思います。

改正のポイント

今回の改正により、所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならないとされました。また、相続人に対する遺贈の場合も同様とするとされました。

起こりうる問題

このように、相続開始後、3年以内に相続登記の申請が義務化されましたが、現実的な問題として、相続人が多い、相続人と連絡がとれない、遺産分割協議がまとまらない等々の理由で相続登記の申請ができないということもあるかと思います。その場合は、登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨の申し出をすることにより、相続登記の申請の義務を履行したものとみなすとされました。

 

義務を怠った場合は?

では、登記官に申出もせず、相続登記の申請の義務を怠った場合はどうなるのでしょうか。この場合は、正当な理由がないのにもかかわらず相続登記の申請の義務を怠った場合は、10万円以下の過料に処するとされました。

なお、過料とは、行政上の秩序の維持のために違反者に課される制裁で、刑事事件の罰金とは異なります。そのため、過料に処せられたとしても、前科にはなりません。

この正当な理由の具体的類型は、今後、法務省から発出される通達等で明確化するとされておりますが、令和3年9月27日現在「正当な理由」があると考えられる例としては、法務省が公表している資料(令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント9頁)によりますと

①数次相続が発生して相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケース、

②遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているケース、

③申請義務を負う相続人自身に重病等の事情があるケース

などとされております。

また、相続登記の申請の義務は、令和3年の改正不動産登記法が施行された日よりも前にすでに相続が開始している不動産についても申請義務があるとされました。

その他、相続人に対する遺贈に限られますが、遺贈による所有権の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができるとされ、相続登記の申請の義務を履行しやすいように改正されました。

おわりに

相続登記の申請の義務化のおおまかな概要をお話しました。不動産をお持ちで相続登記をしていない方は早めに登記をすることをお勧めいたします。弊所では相続登記に関するご相談を承っておりますのでご相談ください。

 (文責:佐々木)

参考資料 

法務省民事局 「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」

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