事例紹介

不動産2021.11.30.清算型遺贈の場合の遺言執行者の実務

はじめに

清算型遺贈とは、例えば「不動産を含む全財産を売却し、A、B、Cに各3分の1づつ遺贈する」というような遺言に基づく遺贈のことです。

一般的には清算業務が必要なため、遺言執行者が選任されることが多いです。

では遺言執行者にはどこまでの権限があり、実務的にはどのような手続きがあるのでしょうか。

司法書士の立場から、不動産売却や登記について詳しくご説明します。

 

遺言執行者の権限

まず、遺言執行者の権限は非常に大きく、特定遺贈、包括遺贈問わず基本的に執行者のみで不動産の売却などの実務をすることができます。

相続法改正まで遺言執行者は相続人の代理人であるとされていたので、相続人の意に反することまですることができるかどうか若干疑義のある面もありましたが、改正により遺言の内容の実現が執行者の目的であるとされましたので、より権限が確実になりました。

 

 

相続人がいる場合の不動産実務

元々実務的には、相続人がいる場合売却の前提としての相続登記は遺言執行者の権限ですることができましたし、相続人の代理人として権利証(登記識別情報)も受取れます。

そして売却時の登記や実務も遺言執行者の権限(執行者の実印と印鑑証明書)で完全にできます。手続きに相続人は不要です。

 

相続人がいない場合の不動産実務

相続人不存在の場合、特定遺贈と包括遺贈で対応が分かれます。

特定遺贈の場合、売却の前提として必ず相続登記が必要です。

学説的には相続財産管理人の選任と相続財産法人への変更登記が必要となります。

しかし、実務的には、必ずしもそうではなく、後述する包括遺贈と同様の登記がされることもあります。

 

包括遺贈の場合、そもそも相続人不存在にはあたらないため相続財産管理人の選任は出来ないという見解が学説実務ともに一般的です。

手続き的には相続登記なしで、形式的に相続財産法人名義への変更登記をしてから不動産売却をします。

つまり、問題なく換価してからの遺贈が執行者のみでできます。

 

あとがき

遺言執行時の登記手続きはかなり専門的で、弁護士さんから質問されることもしばしばです。相続実務に詳しい司法書士にご相談ください。

余談ですが、税務上、相続人に譲渡所得税が発生する場合はその処理権限も執行者に与えておくとより安全です。

またNPOなどへの遺贈の場合、非課税になるか否かは事前に確認すべきでしょう。

文責:庄田

 

 

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