事例紹介

不動産2021.11.8.判断能力が十分ではない家族所有の不動産の処分…成年後見制度について

はじめに

〇認知症の父は施設に入っているが、その生活を支えるための資金が足りない。

父親名義の不動産を売却して父の施設費にあてたいが、どうしたらよいか・・・?

 

このような場合、成年後見制度を利用することで本人に代わって

不動産の売却をすることが可能です。

成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などによって判断能力が

十分にない方を法的に支援し、保護するための制度です。

判断能力の衰えた後に裁判所に後見人等を選任してもらう法定後見制度と、

判断能力が十分なうちに判断能力が衰えたときに備え後見人を自分で選び

契約しておく任意後見制度があります。

 

また、法定後見制度には、本人の判断能力の程度に応じて、

「後見」「保佐」「補助」の3つがあります。

申立人からの申立にもとづき、家庭裁判所は本人を援助する

「後見人」「保佐人」「補助人」を選任する審判をおこないます。

 

今回は判断能力が最も欠けている場合に利用される後見の手続きについて説明します。

 

成年後見の手続き

本人の住所地を管轄する家庭裁判所に、後見開始の審判の申立てを行います。

申立てができるのは、本人、配偶者、4 親等内の親族等です。

申立人や親族を後見人の候補者とすることができますが、本人の財産が多額な場合や、

本人と候補者の関係性などから、弁護士・司法書士などの専門職後見人が選任されたり、

後見監督人が選任されたりする場合がある点には注意が必要です。

 

  参考:申立てに必要な書類(東京家庭裁判所の場合)

  ・後見開始等申立書           ・申立事情説明書

  ・親族関係図              ・本人の財産目録及びその資料

  ・相続財産目録及びその資料       ・本人の収支予定表及びその資料

  ・後見人等候補者事情説明書       ・親族の意見書

  ・診断書(成年後見用)         ・診断書付票

  ・本人情報シート            ・本人の戸籍謄本(全部事項証明書)

  ・本人の住民票又は戸籍附票       ・後見人等候補者の住民票又は戸籍附票

  ・本人の成年後見等に関する登記がされていないことの証明書

 

 

申立後の流れ・・・不動産売却まで

家庭裁判所の審理の後(通常1~2か月程度)、審判が確定し、後見開始となります。

審判確定から約2か月後に行う家庭裁判所への初回報告が終わるまでは、

急迫の必要がある行為以外をすることはできません(民法854条)。

 

〇居住用不動産の場合

成年後見人が家庭裁判所の許可を得ずに被後見人の居住用不動産を

売却した場合、契約は無効です。

被後見人が施設にいる場合、居住用不動産ではないと考えるかもしれませんが、

居住用かどうかは実質的に判断され、過去に生活の本拠となっていた建物とその敷地や

将来生活の本拠として利用する予定の建物とその敷地も含まれます。

 

〇居住用ではない場合

家庭裁判所に対し事前の報告が必要ですが、許可はいりません。

おわりに

このように、後見等の申立てから不動産売却までには多くの書類や資料の提出が必要で、

時間もかかります。

お手続きに不安がある場合には、専門家のサポートをご検討されてはいかがでしょうか。

弊所では、裁判所に提出する書類作成代理や、不動産売却に至るまでの様々な手続きの

サポートを行っています。ぜひお気軽にご相談下さい。

 

文責 桃田

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