事例紹介

不動産2021.04.26.アメリカ在住の日本人が日本の不動産を売却する場合~渉外登記シリーズ②

 

前書き

在外日本人が不動産を売却する際に問題となるのは主に、以下の3点です。

①住所変更の有無とその証明書類

②印鑑証明書又はそれに代わる書類

③本人確認

今回はアメリカに限って、事例を取り上げたいと思います。

 

住所変更がある場合

売主に登記簿上の住所から住所変更がある場合、移転登記の前提として住所変更登記をしなければいけません。

添付書類として、日本にいれば住民票や戸籍の附票を添付しますが、アメリカにいる場合はそれに代わる書類が必要です。

証明書類は⑴在留証明書、⑵宣誓口述書(Affidavit)、となります。

在留証明書は在米大使館又は領事館で、宣誓口述書は公証役場(Notary Pablic)で作成してもらいます。

複数回、住所が移転している場合、アメリカ国内であれば、上記1,2いずれでも証明してもらうことは可能ですが、過去の住所を証明するものを出さなければならず、難易度が上がります。

更に、別の国からの移転があると、完全な証明は難しくなります。

その場合、司法書士が日本の管轄登記所へ事前相談し、必要な証明書類について確認することになります。

 

印鑑証明書

不動産の売主は登記義務者となるため、印鑑証明書が必要となります。

アメリカに住んでいても日本国籍であれば、在米日本大使館又は領事館で印鑑登録をし、印鑑証明書を発行してもらうことが出来ます。

この印鑑証明書には通常通り、発行から3か月の期限があります。

しかし、この印鑑登録の制度はあまり使われておらず、また期限があるため、実務上は署名証明書(拇印証明)を発行してもらうことが多くなります。

公館発行の署名証明書には貼付型と単独型があり、どちらでも登記に使用することが出来るのですが、弊所では基本的には貼付型をお願いしています。

 

というのも、貼付型とは署名する書類と証明書を合綴してある型ですので、単独型と違い、署名の照合をする必要がないからです。

日本には署名の文化はありませんし、司法書士も審査をする登記官も正直なところ同一性が分かりません。

それでも単独型で申請すると登記官には嫌がられ、最悪、照合ができなければ登記は却下されてしまいます。

そのリスクを避けるため、弊所では事前にメールで委任状をお送りし、貼付型での作成をお勧めしております。

しかし、ここまで記載しておいて今更なのですが、広いアメリカでそうそう都合よく近くに大使館等があることはあまりなく、その場合は次の2つの方法によることになります。

 

大使館及び領事館一覧

https://www.us.emb-japan.go.jp/itpr_ja/kankatsu.html(在米日本大使館ホームページ)

 

 

印鑑証明書に代わる書類①

印鑑証明書に代わる書類として、公証人(Notary Pablic)発行の署名証明書を使用することが出来ます。署名証明書には有効期限はありません。

署名証明書の作成方法は、署名する書類(今回でいうと司法書士への登記委任状)を持参し、

公証人の前で書類へ署名し、証明書を合綴してもらうという流れになります。公証人は州ごとに定められており、書式などには若干の違いがあります。

 

印鑑証明書に代わる書類②

売主様が日本に帰国している際に書類を準備したいニーズがあります。

その場合、住所が日本に無いので印鑑証明書が取得できませんが、代わりに公証役場で署名証明書を作成することが出来ます。

この方法は従来はあまり認められていませんでしたが、現在ではほぼ問題なく利用できるようになりました。署名証明書ですので、期限はありません。

 

本人確認

売主様が契約、決済に出席できない場合に共通して問題となるのは本人確認です。

ただ、日本人であることから意思疎通がしやすいため、在外外国人のケースと比べると難易度は下がります。

基本的に、契約時か決済時に面談して本人確認します。しかし、権利証があり、代理人として親族が決済に来る等事情がある場合には個別対応、となります。一律にテレビ電話でOKとは言えません。

 

後書き

アメリカというある意味では最も身近な外国ですら、上記の通り、なかなか大変な手続きが必要です。

これがハーグ条約(公的な書類を互いに使えるルール)すら加盟していない国であればどれほど大変なことになるか、想像がつきますでしょうか。もっと勉強しないといけないと思う毎日です。

(文責:庄田)

 

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