事例紹介2019.12.24.行方不明の相続人がいる場合の遺産分割
遺産分割協議をする際、行方不明の相続人(不在者と言います)が居ると、手続きが大変煩雑になります。
所在が分からなくても、その人抜きで遺産分割協議を進めることはできないからです。
兄弟や親戚であっても、長年連絡を取っておらず、どこにいるかわからない…という方もいるのはないでしょうか。
今回は、不在者が居る場合の遺産分割協議についてお話しします。
先に流れを書いておきますと、以下のような手順を踏んで進めることとなります。
不在者の調査
↓
不在者財産管理人の選任申立
↓
遺産分割協議
↓
裁判所へ報告、報酬付与の申立(任意)
↓
不在者財産管理人選任の取消の申立
不在者の調査
まず、長年住所がわからない相続人が居る場合、親の戸籍等に入ったままになっている等、
本籍地が分かれば「戸籍の附票」という書類を取得してみましょう。
戸籍の附票には、その本籍地にいる間の住所の移転の遍歴が載っています。
ただ連絡を取っていないだけの場合、ここから住所が判明することもあります。
本籍地が分からない場合は、被相続人(亡くなった方)の戸籍を調査し、不在者の最後の住所まで特定します。
特定した住所に不在者が住んでおらず、連絡がとれない場合でも、不在者抜きで遺産分割協議をするということはできません。
そこで、「不在者財産管理人」という制度を使って協議を進めることができます。
(ちなみに、7年以上行方が分からない場合は、失踪宣告も検討することができます。
不在者財産管理人と違い、失踪宣告をするとその人は法律上死亡したものとみなされます。)
不在者財産管理人の選任申立
不在者財産管理人とは、その名の通り不在者の財産を管理する者で、家庭裁判所に申立をすることにより選任されます。
資格は必要ありませんが、利益相反となるため、基本的に相続人は就任することができません。
つまり、同時に相続人となっていない他の親族等に頼む必要があります。
引き受けてくれる親族等が居ない場合は、弁護士や司法書士が選任されることが多いようです。
ちなみに法律での不在者の定義を見てみると、
従来の住所や居所を去り、容易に戻る見込みのない者
となっています。これは少なくとも1年は音信不通であることを求められるようです。数日や数か月では認められません。
以下の書類を添付して裁判所に申立をします。
①不在者の戸籍謄本
②不在者の戸籍附票
③財産管理人の住民票又は戸籍附票
④不在の事実を証する資料
⑤不在者の財産に関する資料
⑥利害関係人からの申立ての場合、利害関係を証する資料
①~③は役所で取得可能な書類です。
④は、返戻された不在者への手紙や、警察への行方不明者届の受理証明です。
⑤は、不動産の登記事項証明書や預貯金の残高証明書です。
⑥は、相続人からの申立ての場合、不在者とのつながりのわかる戸籍謄本です。
以上の書類と、申立費用となる800円分の収入印紙を申立書に貼り、指定された金額の予納郵便切手を添付して、裁判所に申立をします。
裁判所の調査を経て審判の謄本が届いたら、不在者財産管理人就任となります。
財産管理人の職務は、
①不在者の財産がなくなる
②不在者が死亡する又は失踪宣告がなされる
③所在が確認される
以上のいずれかの時点まで続きます。
次回は、実際の遺産分割協議と不在者財産管理人の職務の流れについて見ていきたいと思います。
(川上)
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