その他2017.10.16.働き方を問い直す
経営戦略としてのワーク・ライフバランス
「時間制約のない男性社員」と「二児の母で時間制約のある女性社員」あなたが経営者ならどちらを採用するだろうか。
後者の人材を採用し、創業以来4期連続増収増益を挙げている司法書士事務所があります。
その司法書士事務所は、三年前より働き方改革を通じて生産性の向上、優秀な人材の獲得と定着を実現させているそうです。
「昼回り業務が多く、資料作成が時間外になる」
「決済や会社設立等クライアント主導の業務が多くスケジュールをコントロールできない」
「相続等一般客の相談業務の為休日稼働を余儀なくされる」
等、山積する様々な課題を前述の女性社員の入社を機に“時間に頼らない方法”で解決し、残業時間は一人当たり平均60時間/月削減、売り上げ増加率は平均159%/年で成長を遂げているのです。
これは前述の組織だけでなく、日本全国の様々な業種・職種で起きている新たな潮流です。
見直しを求められる、日本の働き方
大手広告代理店の女性新入社員の過労自殺がきっかけとなり、経団連から過重労働の防止を徹底する呼びかけが出されました。
しかし一部では、労働時間への一律な上限規制は経済発展を妨げるのではないかという声も高まっています。
「人口ボーナス期」という言葉をご存知でしょうか。
ハーバード大学David.E.Bloomが十年前から提唱し、非常に認知度が高まっている考え方です。
働き方改革をこの考え方で読み解くと、なぜワーク・ライフバランスが企業・組織の経営戦略として有効であるかわかります。
人口ボーナス期は、若者が多数を占め、高齢者の割合が低い国の状態を指します。
現在人口ボーナス期を迎えているのは、中国、韓国、シンガポール、タイといった国々です。
日本が人口ボーナス期にあった、60年代~90年代半ばごろ、確かに長時間労働は経済発展に必要不可欠な要素でした。
安い労働力を武器に「早く・安く・大量に」で世界の市場を席捲することができ、
高齢者が少ないことから保障費も膨らまず、その分の利益をインフラ投資につぎ込むため爆発的経済発展につながるのです。
しかし、この人口ボーナス期が永遠に続くわけではありません。
人口ボーナス期に経済が発展すると、親が子供の教育に投資し高学歴化が進みます。
すると出産年齢が遅くなり少子化が促進、若年労働者が減ることで一人当たりの人件費があがります。
そうなると、世界中から価格競争において仕事を受注するというビジネスモデルが成立せず、仕事は人件費の安い国に流れてしまうのです。
その結果GDPは横ばいになってしまうという一連の流れが、人口ボーナス期からオーナス期に移行する過程でほぼすべての国に当てはまります。
さらに驚くべきことに、人口ボーナス期は一つの国で一度終わると二度と来ないといわれています。
人口オーナス期で経済発展しやすい働い方のポイントが三つあります。
①なるべく男女ともに働くこと
②なるべく短時間で働くこと
③なるべく異なる条件の人を揃える
この3点を実現するために、ワークライフバランスが大切になるそうです。
ワークライフバランスが個人にとって必要な理由
人間の平均寿命は10年に約2歳ずつ伸びており、2007年に生まれた日本人の子供の半数は107歳を超えると言われています。
1997年生まれの半数が101~102歳、1987年生まれの半数が98~100歳までと超長寿時代が到来します。
こうなると仕事の期間は当然長くなり、今就いている専門性の高い仕事が数十年後AIに代替されてなくなる可能性すらあります。
そこで、超長寿社会を乗り切るために必要な3点が以下になります。
①脳へのダメージの軽減
認知症状態で過ごす期間が長くならないためにも、適度な運動をし、しっかり睡眠をとり、家族からプラスの感情を受けることが大切だとされています。
②学び直しとスキルの再習得
単に仕事をしているだけだと、時代の変遷とともに職を失う可能性があります。常に学び、知識を刷新する必要があります。
③多様性に富んだ人的ネットワークの構築
地続きのキャリアを歩めない可能性がある将来では、人脈がものを言います。
以上月報司法書士7月号、ワークライフバランスコンサルタント、大畑慎護氏の特集を援用させてもらいました。
中々難しいと思いますが、高齢化社会に備え、ワークとライフのバランスがとれた生活を送れるように努力したいですね。
(文責:角谷)
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