事例紹介

不動産2025.10.31.住宅組合名義建物の名義変更 (2)

 前回ご紹介した謎の住宅組合名義の名義変更の実例の続きをご紹介します。

 さて前回は、清算人が既に亡くなっている住宅組合についてご紹介しました。清算人がいない場合は「スポット清算人」を立てることで、登記手続きができるのです。

スポット清算人とは

 過去の法人や団体に関係する残された手続きを一時的に担当する人のことです。すでに清算人がいない、または機能していない団体に対して、裁判所に申し立てを行い、必要な処理をするためだけに新たに任命されます。

 今回の実例でも裁判所の手続きを通じてスポット清算人が選ばれました。この清算人は、登記簿上に残された住宅組合の不動産を処理するために必要な最低限の行為(今回については「名義変更の手続き」)を行う権限を持ちます。

 この制度があることで、数十年前の団体でも、現代の法律に従って登記簿を整理することが可能になります。

では実際に何を原因として名義を変更したのか。

 今回のケースで、実際に建物を使っていた人に所有権が移された根拠は、「時効取得」という民法上の制度です。

時効取得とは

一定期間、平穏・公然・所有の意思を持って他人の土地を使い続けた場合に、その人が所有者になれる制度。

 これは、20年以上にわたって、他人の不動産を自分のものとして使い続けた場合、法律上その人に所有権が認められるという仕組みです。ただし、ただ使っているだけでは要件を満たしておらず、固定資産税を支払ったりと、「自分の不動産だと思って管理している」ことが必要です。

 今回のケースでは、長年その条件を満たしていたため、法律上「時効で取得した」と認められ、登記簿上の名義も変更されました。

 もちろん住宅組合名義の権利書も残っているはずがないので、清算人に登記用委任状の認証を行ってもらったり、法務局への事前打ち合わせや、補完書類として固定資税の支払い履歴を提出したりなど通常の登記申請とは異なった内容となりました。

 無事にスポット清算人によって、ようやく取り残された住宅組合名義の不動産を処理し、正式に名義を現在の使用者に移す手続きを進めることができました。

複雑な手続きについても是非弊所へご相談ください。

(文責:川添)

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