事例紹介

事例紹介2024.09.3.デジタル遺産

インターネットの普及やIT技術の進化によりデジタル化の進んだ現代社会では、パソコンやスマホのユーザー自身が亡くなってしまった場合、デジタル機器のログインパスワードがわからず開けない、ネット証券口座がわからない等の問題が発生します。

デジタル遺産とは

「デジタル遺産」とは、法律上の定義はありませんが、故人がデジタル形式で保管していた財産(遺産)を意味するのが一般的です。故人が死亡時に有した財産は相続の対象となりますので、現金や不動産などの財産だけでなく、デジタル遺産も相続の対象となります。デジタル遺産の種類としては、以下の例が挙げられます。

  • 暗号資産(仮想通貨)
  • 電子マネー
  • クレジットカードのポイントやマイレージ
  • デジタルの著作物(著作権)
  • NFTアート
  • ネット銀行やネット証券の口座

デジタル遺産の相続

デジタル遺産の相続については、ほかの遺産と比較すると、以下の点において難しいと考えられています。

1.相続人による把握が難しい

デジタル遺産は目に見えないため、遺品整理などの際に発見することは決して容易ではありません。その存在について通知が来るケースは稀であるため、デジタル遺産の所有者が亡くなると、相続人には探す方法がなくなってしまうこともよくあります。ネット銀行やネット証券の口座などは、インターネット上の操作だけで取り引きを完結できることがほとんどです。実店舗がない場合もあり、通帳が発行されないため、本人以外の人が把握することが難しいことがあります。

2.相続手続きが確立されていない場合がある

相続手続きが確立されていないデジタル遺産も少なくありません。
たとえば暗号資産(仮想通貨)の場合、日本の暗号資産交換業者の口座で保管されているものについては、相続手続きが確立されていますが、海外事業者が運営するウォレットサービスで保管されている暗号資産(仮想通貨)については、多くの場合、相続手続きが確立されていません。
また、買い物に利用できるポイントなどについては、利用規約によって相続が不可とされているケースもあります。以前手続した某携帯会社のポイントも、相続の対象になりませんでした。デジタル遺産がわかっても、相続人がデジタル遺産を取得できない可能性もあります。

3.相続の手続きが複雑でわかりにくい

デジタル遺産の相続手続きは手間のかかる作業が多く、分かりにくいという点が問題です。 デジタル遺産の窓口はほとんどがオンライン化されています。名義変更や解約などの手続きをする必要がある場合、インターネットに不慣れであると作業が難しいと感じることもあるでしょう。
以前、某携帯会社からの謎の請求ハガキが届いたのですが、なんの請求なのか明細が一切記載されておらず、某携帯会社の携帯部門にかけたところ、ウチの契約ではない、電気か固定電話ではないかと言われ、どちらにもかけたのですが、どちらもウチではないからわからないといわれ困り果てたことがあります。契約内容も複雑になっており、たどり着いて解約するまで容易ではありません。

4.被相続人にしかわからない情報で管理されている

遺族がIDやパスワードを知らなければ、デジタル遺産にアクセスできません。何度もパスワードを間違えるとアカウントがロックされる可能性もあります。
相続人が被相続人が設定したアカウントやパスワードを知らず、デジタル遺産を把握できない場合でも、金銭的な価値があれば相続財産に含まれてしまいます。
また、音楽や動画のような定額課金サービスは、ユーザーから手続きをしなければ解約されません。遺族が契約状況を知らなかったり、アクセス方法が分からなかったりした場合、無駄な出費を続ける可能性があります。
更に、これらのサービスは、オンライン上で手続きが完了するようになっているので、本当に解約できているのか不安になります。
そのほか、SNSなどのアカウントのパスワードが分からず放置してしまうことがあると、なりすましや乗っ取りをされる可能性もあります。乗っ取られたアカウントが悪用されることがあれば、第三者が被害に遭うことも考えられます。
SNSやブログといったサービスの退会が簡単にできるよう、アカウント情報を整理しておくことが大切です。

トラブルを防止し、スムーズな手続きをするために

デジタル遺産を所有している場合は、相続人がその存在を把握できるように、生前の段階でリストを作成しておくことが望ましいでしょう。
また、利用しているサービスを定期的に見直し、使っていない不要なサービスは解約しておきましょう。多くの定額課金サービスは自動更新され、利用者が解約手続きをしない限り、支払いが継続してしまいます。サブスクを定期的に見直して不要なサービスを解約することで無駄な出費を抑えることもできます。
相続人がデジタル遺産に気づかず、相続手続きを済ませてしまった場合、事後に遺産分割協議のやり直しや期限後申告、修正申告となり、相続トラブルに発展するケースもあり得ます。相続人がその存在を把握できるよう、生前整理をしておくことが大切です。エンディングノートやスマートフォンなどで入力できる終活アプリに、デジタル遺産の内容やアクセス方法、処分方法を記録し、家族と共有しておきましょう。
できればデジタル遺産も遺言書の形で残すことが望ましいです。また、第三者によるアカウントの乗っ取りやなりすましを防ぐためにも、死後委任契約などで代理人に管理を依頼する方法もあります。弊所でも遺言書の作成や死後事務委任契約など承っておりますので、是非ご相談ください。

(文責:高橋)

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