事例紹介

相続・遺言2016.12.6.相続放棄と連帯保証人

相続財産には、不動産や預金などの積極財産ばかりでなく、借金や買掛金などの消極財産も含まれ、マイナスが多い場合には相続放棄を選ぶことができることは以前のコラムでお話しました。放棄をする場合には、自己のために相続の開始があったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所に対する申述によってしなければなりません。大切な人を失った悲しみの中で、資産と債務のバランスをまとめて、相続放棄するか否かを判断しなくてはならいないのは大変な作業ですが、すべてを洗い出して検討しなくてはいけません。その際に、見落としがちなのが連帯保証契約です。

 

連帯保証とは、保証人が主たる債務者と連帯して債務を負担することを約束することです。連帯保証人の責任は重く、自分が借金したのと同じ、つまり「お金を借りた人と同じ立場」になるのが、連帯保証契約です。

 

連帯保証に関して注意しなければならないのは、以下の2つの場合です。

 

1.被相続人が連帯債務者になっていた場合

亡くなった方が、友人や親族、会社などの債務の連帯保証人になっていた場合には、その連帯保証債務は相続の対象になります。

連帯保証債務は、基本的には、主たる債務者が支払えなくなった時に返済をするというものなので、支払えなくなった事情がない限り、督促がこないので相続開始の時に判明しにくい債務です。相続人としては、契約書などをよく確認し、主たる債務者の債務額・履行状況などをよく確認して、承認するか放棄するかを判断する必要があります。

なかでも、一連の相続登記が終わった何年後かに連帯債務が発覚した場合、判断のわかれるところですが、すでに承認してしまっているので、特別な事情がない限り放棄をするのは難しいことが多いです。

なお、相続の承認または放棄は、責任の範囲が限定される限定承認を除いて、すべての相続財産について相続するか放棄するかの選択なので、一部だけ放棄することはできません。

 

2.相続人が被相続人の債務について、連帯保証人となっている場合

相続人が亡くなられた方の債務に連帯保証人となっている場合です。例えば、事業をされていた方などの配偶者や事業承継者(子どもなど)が金融機関からの借り入れに連帯保証人になっていたりするケースです。

この場合、相続放棄をすれば、被相続人の主たる債務は承継しないことになりますが、連帯保証人としての債務は、相続人自身の債務であるため、放棄することはできません。相続人自身に債務がのしかかってくることになり、支払えない場合には自己破産になることも考えられます。

 

親の死後に借金や買掛金などのマイナスの資産を明らかにするのは、プラスの資産を洗い出すことよりも困難な作業になります。ですので、親の生前に「借金」についても話し合いの場を持ち、できるだけ把握しておくことが大切です。

 

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