建設業2026.10.16.令和6年改正建設業法 見積りに関する新規定と注意すべきポイント

はじめに
令和6年の建設業法改正(令和7年12月施行)により建設業者が注文者に交付する見積書にも新たな規則が定められました。建設業者には注文者から請求があったときには見積書を交付する義務があります(建設業法第20条第4項)。実際に注文者からの求めがあった際に対応できるように、ポイントを押さえておきましょう。
第20条第1項 努力義務としての見積書発行
建設工事を請け負う場合、見積書の作成は請負金額や注文者の請求の有無にかかわらず常に努力義務として定められています。第1項には見積書の記載事項が細かく定められており、材料費等の経費とその内訳、工事の工程ごとの作業、準備に必要な日数を記載することと定めており、この見積書を「材料費等記載見積書」といいます。
作業や準備日数はわかりやすいですが、「材料費等」については注意が必要です。「材料費等」として条文に記載されている項目は、「材料費」、「労務費」と省令で定める経費となります。省令で定める経費は「法定福利費」、「安全衛生経費」、「建設業退職金共済契約に係る掛金」の三つです。
法定福利費は「労務費」×「保険料率」で計算する方法が一般的です。具体的には雇用保険料、労災保険料、健康保険料(「子ども・子育て支援金」を含む)、厚生年金保険料を指し、いずれも事業主負担分のみを計上します。また労災保険料は元請の見積書にのみ記載し、下請の場合は原則不要です。
第20条第2項 通常の費用を著しく下回る材料費等の禁止
第2項は見積書上の材料費等が「通常必要と認められる」額を著しく下回ってはいけないという簡素な規定です。ただしこの規定は義務の定めで、あらゆる工事に適用されます。では「通常必要と認められる」額とは具体的にはどのようなものでしょうか。
「適正な労務費」については、国の基準で「適切な職種の公共工事設計労務単価×適正な歩掛」を基に算出する方法が示されています。こちらは比較的明確な一方で、適正な労務費を「著しく下回る」とはどのようなものかは明示されておりません。参考になるのは国土交通省が公表した「通常必要と認められる労務費を著しく下回るおそれのある取引事例集」です。例示されているものとしては、長期間固定の単価を使用し見直しをしない、根拠なく画一的な割引・端数調整をする、注文者の予算に合わせて作成した見積などが挙がっています。
第20条第3項 注文者側の義務
第3項には注文者側の義務として、契約締結前(入札契約の場合は入札前)に必要な情報の提供と、見積りに必要な期間を建設業者に与えることを義務付けています。
ここでいう必要な情報とは法第19条第1項に定める契約書記載事項(請負代金を除く)のことを指します。見積に必要な最低期間は請負金額が500万円未満なら1日以上、500万円以上5000万円未満なら10日以上、5000万円以上なら15日以上(ただしやむを得ない事情がある場合は10日以上、15日以上の場合に限り5日以内の短縮が可能)となります。たとえば注文者側の情報提供が10月1日で見込まれる請負金額が500万円未満の場合、見積書の交付、契約の締結は最短で10月3日です。なおこの原則は追加工事にも適用されます。
終わりに
見積書作成に細かなルールが定められることは一見煩わしいように感じるかもしれませんが、極端に低い請負金額や短い工期での工事を防止するのが本来の趣旨です。最終的には建設業者側の立場を守ってくれるルールであると、前向きにとらえて適切に対応することをおすすめいたします。注文者や元請が規模の大きい会社であるほど、受注の際に適法な契約書、見積書の作成を求められるケースが多いので、日頃から作成に慣れておけばそのような場合にもスムーズに対応できます。
また日常的に必要な見積書・契約書作成をしていないと、建設業許可の各種申請時や注文者とトラブルになった際になどに不利益を受けるおそれもあります。悪質とみなされると行政処分の対象になることもありますので、法令上義務付けられている書類作成は面倒がらずにしっかりと作成しましょう。
(文責:安住)
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