事例紹介2025.06.16.数次相続により相続人が一人になってしまったら
はじめに
近年の少子化の影響もあり、弊所で取り扱う相続登記の申請でも相続人が多数の案件は少なく、相続人が1~5名程度の事案が多いです。相続人が少数の場合ですと、相続開始後に相続人が亡くなり、残された相続人が1名のみになってしまうケースも見られます。例えば高齢の父が亡くなり、高齢の母と一人っ子の子供が相続人になった場合に、相続人である母が亡くなった場合などがこれにあたります。一見すると子供のほかに相続人がいないことは自明なので、簡単に登記ができそうなようにも見えますが、通常の相続とは異なる手続きや添付書類が必要になりますので注意が必要です。
遺産分割協議をする前にほかの相続人が亡くなった場合
上記の父母と子1人のケースで、母が遺産分割協議をする前に亡くなった場合ではどうなるのでしょうか。結論から述べますとこのような場合は「父から母・子に2分の1ずつ相続する登記」と「母が相続した持分2分の1を子が相続する登記」をつづけて申請することになります。
この場合ですと登記時点で亡くなっている母名義で登記ができるのは不思議に思えますが、手続き上は可能です。亡くなった相続人名義で相続登記する場合でも、相続人の住所が登記簿上に記載されますので、亡くなった相続人の住所を証明する資料も必要になります。もし相続人がなくなってから期間が経っていて、住所を証明する資料が取得できない場合には本籍地を住所として登記することもできます。
登録免許税については、土地の父から母(死者から死者)への相続登記は非課税となります。根拠となる条文は租税特別措置法第84条の2の3第1項となりますので、申請書には「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」と記載します(令和7年6月現在、こちらの非課税措置は令和9年3月31日までとなっておりますので、実際に申請する際には適用が受けられるかどうかご確認ください。)。
遺産分割協議をした後にほかの相続人が亡くなった場合
同じパターンで、母と子が遺産分割協議を行い、子が相続することで合意した後に母が亡くなった場合ではどうなるのでしょうか。母と子が生前に遺産分割協議書を作成し、印鑑証明書が添えられている場合には、通常の相続登記と同様に遺産分割協議書と印鑑証明書を添付して登記申請をすることになります。
一方で協議はまとまっていても協議書を作成していなかった場合には、子が遺産分割証明書(遺産分割協議の日時、内容などを記載した遺産分割協議書に代えて作成する文書)を作成し、印鑑証明書とともに登記申請に使用します。こうしたケースですと、当事者の一方のみが協議の内容を申告することになりますので、若干不自然なような印象を受けますが、この場合には証明書類として認められます。
おわりに
ここまで見てきましたとおり、ほかの相続人全員が亡くなり、最後に残った相続人は一人で相続登記ができるものの、その手順や必要書類は通常の相続とは異なります。複数回の相続登記をするパターンですと、登録免許税額が割高になる可能性もあります。また今回は相続人二人のケースを例に出しましたが、長期間相続登記をせずに複数の相続人が亡くなっている場合には相続関係の整理も難しくなります。数次相続でお困りの際には是非神楽坂法務合同事務所にご相談ください。
(文責:安住)
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