事例紹介2023.11.30.著作権の相続について
被相続人が生前に、著作物の出版や写真や絵など創作物を発表している場合、被相続人はそれらの著作権を所有していることになります。著作権は申請をせずとも創作した時点で付与されるもので、被相続人が亡くなると相続財産となり、相続人が相続することができます。
では、著作権にはどのような権利が含まれており、相続はどのように行えばいいのでしょうか?
まずは著作権についてご説明します。一般的に使われる「著作権」という言葉には、何らかの表現を経て著作者の思想的感情を盛り込んだ著作物を支配する権利が含まれています。代表的なもので言えば、音楽・小説・映画・写真・コンピュータープログラム・建築物・美術品などです。著作権は、大きく2種類の権利、「著作者人格権」と「著作権(財産権)」に分かれています。
まず「著作者人格権」とは、著作者が制作した著作物に関わる人格的な利益を保護することを目的とする権利の総称です。
小説・映画・音楽などを代表する著作物には、著作者の考えや主張が強く反映されているため、第三者が著作物の利用方法を誤ると、著作者の人格的な利益や本来伝えたいことが損なわれてしまう可能性があります。このような自体を防止するために、著作者人格権が設けられています。著作者人格権は、著作者のみが所持する権利で、譲渡や相続が不可能となっています。これを一身専属権といいます。
そのため、著作者が亡くなると一定の範囲を除いて、この権利は消滅します。
代表的な「著作者人格権」は次の通りです
①氏名表示権
自分の著作物を公表するときに、著作者名の表示の有無、表示する場合は実名か変名かを選択できる権利
②公表権
自分の著作権の中で、未公表のものを公表するかどうか、公表する場合はいつ・どのように公表するかを決められる権利
③同一性保持権
自分の著作物の内容やタイトルは自分の意思に反して勝手に変更されない権利
つぎに「著作権(財産権)」とは、特許権などと同様の知的財産権のひとつです。こちらは著作物の全てまたはその一部を譲渡や相続することが可能です。譲渡や相続を行った場合の著作権の権利者は、著作物を制作した著作者本人ではなく、著作権を新しく取得した人となります。
相続は原則的に、被相続人の相続財産に属した全ての権利と義務を承継しますが、被相続人の一身に専属したものはこの承継に含まれないとされています。一身に専属したものとは、相続人が承継することが適当でないと判断される権利を指します。この権利の代表的なものは、生活保護受給権や身元保証人としての地位などです。
著作人格権は一身に専属したもの(一身専属権)とされているため、相続の対象となりません。対象となるのは著作権(財産権)のみです。
この著作権(財産権)を相続する場合には、著作権の移転手続きをする必要はありません。相続人の間で話し合いを行い、著作権(財産権)を相続する人を決めます。著作権(財産権)の移転手続きが必要ない理由は、小説・音楽・映画・写真などの著作物が制作された時点で自動的に著作権が発生しているからです。そのため、基本的には著作物の著作権を取得する手続きはありません。
相続人同士の話し合いで決められる著作権(財産権)の相続は、後になって権利などの問題でトラブルが発生する可能性があります。そのため、遺産分割協議書を作成し、書面として残しておくことが安心です。遺産分割協議書の作成等でお困りの際は専門家に相談される事をおすすめします。
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