事例紹介

未分類2017.02.1.緊急時の遺言

緊急時の遺言

 

 

遺言は一般的には三種類ですが、緊急時には、特別に認められる危急時遺言と隔絶地遺言というものがあります。危急時遺言とは、死期が迫っている遺言者が口頭で遺言をし、証人がそれを書面にする遺言です。隔絶地遺言には伝染病隔離者の遺言、在船者の遺言と、船舶の遭難である場合に認められる船舶遭難者遺言があります。

 

危急時遺言(民法976条)

一般臨終遺言とも言います。疾病その他で死亡の危急に迫っている場合に認められる遺言です。

 

作成要件

(1)証人3人以上の立会いの下、内1人に遺言の趣旨を口授します。

(2)口授を受けた証人がそれを筆記します。

(3)口授を受けた証人が、筆記して内容を遺言者及び他の証人に読み聞かせ又は閲覧させます。

(4)各証人が筆記の正確なことを承認した後、遺言書に住所氏名を記入し押印します。

 

+α家庭裁判所による確認

遺言の日から20日以内に、証人の1人又は利害関係人から家庭裁判所に請求して、遺言の確認を得る必要があります。家庭裁判所は、遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得なければ、これを確認することができません。(民法976条4項)

 

伝染病隔離者の遺言(民法977条)

伝染病のため行政処分によって交通を絶たれた場所にある者は、警察官一人及び承認一人以上の立ち合いをもって遺言書を作ることが出来ます。伝染病だけではなく行政処分によって一般社会と交通を絶たれている場合にも適用されます。

 

作成要件

(1)警察官一人及び承認一人以上の立ち合いが必要です。

(2)自筆の要件はありませんので代筆も可能ですが、口頭は許されません。

(3)警察官と証人が署名捺印します。

 

在船者の遺言(民法978条)

船舶中にある者は、船長又は事務員一人及び証人二人以上の立会いをもって遺言所を作ることが出来ます。なお、船舶中でも自筆証書遺言は作ることが出来ますので、通常はそちらをお勧めします。

 

作成要件

(1)船長又は事務員一人及び証人二人以上の立会いが必要です。事務員とは航海士、機関士、船舶通信士などをいいます。

(2)自筆の要件はありませんので代筆も可能ですが、口頭は許されません。

(3)遺言者と立会人、証人が署名捺印します。

 

 

船舶遭難者遺言(民法979条)

難船危急時遺言とも言われます。船舶の遭難という緊急事態を想定して定められた遺言です。飛行機が不時着した場合にも作成できます。

 

作成要件

(1)証人2人以上の前で、口頭で遺言をします。

(2)証人が遺言の趣旨を筆記して、署名印を押します。なお、遭難が止んだ後、証人が記憶に従って遺言の趣旨を筆記し、これに署名・押印しても問題ありません。

 

+α家庭裁判所による確認

証人の1人又は利害関係人から遅滞なく家庭裁判所に請求して確認を得なければ、遺言は効力を生じません。(民法979条3項)

 

+α遺言の失効

ここに挙げた緊急時の遺言は、遺言者が普通方式によって遺言をすることができるようになった時から6ヶ月間生存するときは無効になります。(民法983条)

 

 

緊急時の遺言について、簡単にまとめてみましたが、あまり身近に感じられる方はいないでしょう。しかし、病院などで死の淵にいる人が遺言をするということは現実に行われています。いざというときに素早く対応してくれる専門家を一人は見つけておくといいかもしれません。

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