事例紹介

相続・遺言2017.05.19.改製原戸籍とは

人が亡くなると相続が発生しますが、相続人の範囲を確定するために、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍が必要になります。この相続人を確定させるべく集める戸籍のうち、ポイントになる戸籍に「改製原戸籍」というものがあります。

 

「改製原戸籍」とは、法律の改正やコンピューター化などで作り直される(作り直すことを「改製」といいます)、前の戸籍のことをいいます。

全国統一様式の戸籍(明治5年式戸籍)が作成されるようになってから何度か形を変えて戸籍は作り直されておりますが、大きな改製は下記の2つです。

 

1.昭和32年の法務省令による改製

それまでの戸籍は「家」を一つの単位として構成されており、孫や甥・姪なども含めた一族全員が同じ戸籍に記載されていました。それまで家族にまつわる法律は、「家」を一つの単位として構成しており、家の戸主には婚姻や養子縁組、離縁などに対する同意権がありました。現在は当たり前となっている個々の身分行為が家と強く結びついていたのです。

しかし、昭和22年5月3日の「個人としての尊重(13条)」「法の下の平等(14条)」を掲げた新憲法の施行を受けて、その理念と相容れないものとして旧戸籍法は改正されました。そして、新戸籍法は親・子・孫の3代に及ぶものを1つの戸籍に記載することはできない旨を定め、夫婦・親子(一つの夫婦および氏を同じくする子ども)という核家族単位で記載するようになりました。

この改正前後で戸籍の様式や記載内容が大きく変更となったため、すべての戸籍について一斉に様式・内容を変更することはできず、段階を経て切り替えを行っていくことになりました。

この時の変更点は以下の通り。

  1. 1つの戸籍には「1つの夫婦、及びこれと氏を同じくする子」のみを記載することになり、従来の「家」ではなく「夫婦」を一単位とする記載に変更。
  2. 従来の「戸主欄」「前戸主欄」がなくなり、「筆頭者氏名欄」が設けられた。筆頭者が死亡しても戸籍上のすべての人が亡くならない限り戸籍は残る。
  3. 同じ戸籍内の各人に共通する事項を記載するための「戸籍事項欄」が設けられた。

 

昭和に行われた改製であることから「昭和改製原戸籍」と呼ばれています。

 

 

2.平成6年の法務省令による改製(戸籍のコンピュータ化)

それまで紙の戸籍を使用していましたが、平成6年からは戸籍をコンピューターで記録することができるようになりました。これを戸籍の電算化といいます。

この時の変更点は以下の通り。

  1. 電算化によりB4の縦書きからA4の横書きへ様式が変更。
  2. 書き方が文章形式から項目化形式に変更
  3. 名称も戸籍謄本が「戸籍全部事項証明書」に、戸籍抄本が「戸籍個人事項証明書」へ。

 

平成に行われた改製であることから「平成改製原戸籍」」とも呼ばれています。(改製作業は自治体ごとに行われますので、まだコンピューター化していない自治体もあります)

 

ここで、改製原戸籍がなぜポイントになるか、というと、改製される前と後で内容に違いがある可能性があるからなのです。基本的には戸籍の記載事項をそのまま写しかえているので、形はかわっても記載されている身分などの事項に変わりはありません。

ところが、改製の際に、前の戸籍に記載されている事項で写し変えられない事項も存在するのです。具体的には、改製前の戸籍の時点で婚姻や死亡などにより除籍されている場合や法律的に有効でない事項(離婚・養子・離縁・認知など)がある場合、新しい戸籍に移記されません。

このようなことがあるため、改製原戸籍を確認しないと相続人のすべてを把握することが難しくなりますので、相続人に漏れがないか確認するため、原戸籍を取得する必要があるのです。

(文責:高橋)

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