事例紹介

相続・遺言2017.04.26.旧民法~相続~

旧民法下での相続

 

 

旧民法の家族法は非常に難解です。それは現行民法には無い、「家」の制度があるからです。

ここでは簡単に、「家とは、戸主とその家族の親族団体」と定義します。

現行民法には家という言葉は出てきません。そのあたりの時代背景も併せてお話しいたします。

 

 

旧民法とは

 

明治新政府にとって、諸外国との不平等条約を改めるには、統一的な民法典を制定する必要がありました。

そこで、民法典が明治23年に公布されましたが、あまりに当時の国情を無視していたことから法典実施反対運動が起こり、そのまま葬り去られました。

その後、上記の民法に代わって新たな民法が順次成立・公布され、明治31年7月16日施行の全五編の民法が、いわゆる旧民法です。

相続に関する部分でいうと、家という制度を維持するための家督相続が特徴的です。

なお、現行の民法には家族や家の規定はなく、親族というかたちでの規定があるのみです。

 

 

家督相続とは

家の要素は「戸主」「家族」「家産」からなります。

家という組織の統率者を戸主といい、家の統率に大きな権限を与え、また義務を課しました。

この戸主に統率されるものが家族であり、家族は戸主に服従する義務を負いました。

家には家として所有している財産があり、これを家産といいました。家産は家を支える物的基礎で、祖先から伝承するものです。

そして、家を存続維持するために、戸主たる地位と家産を一体とした「家督権」というものを構成し、家督権を承継させるために家督相続という手法が採られました。

家督相続により、前戸主が有した一切の権利義務を、家督相続人が、単独で相続することになります。

なお、戸主以外のものが死亡した場合の相続を遺産相続と称しますが、ケースが少なく、現在の相続と紛らわしいためここでは割愛します。

 

 

家督相続の原因

家督相続には以下の4つの相続開始原因があります。

1.戸主の死亡

2.戸主の隠居又は戸籍喪失

3.去家

4.女戸主の入夫婚姻又は入夫の離婚

 

※2の隠居について、戸主は満60歳になると隠居することができました。その際は第1順位の推定家督相続人が戸主になりました。女戸主の場合は、年齢に関係なく隠居することができました。

※3去家について、「きょか」と読みます。戸主が婚姻又は養子縁組の取り消しで家を去ったときのことをいいます。

 

 

家督相続の順位

 

第一順位 第一種法定家督相続人

原則、長男が単独で相続するのが通例です。これだけ覚えていればおおよそ問題ありません。

実際には下記のように詳しく決まっています。

 

第1順位 親等が近いもの優先

第2順位 同親等であれば男優先

第3順位 同親等の男又は女であれば嫡出子優先

第4順位 前3つでの順位が同じであれば年長者優先

 

第二順位  指定家督相続人

第一順位の者がいないときには、前戸主が、家督相続人を指定するものとされていました。

 

第三順位  第一種選定家督相続人

第二順位までの者がないときには、家族たる父、父無きときは母、父母無きときは親族会が選定するものとされていました。

 

第四順位  第二種法定家督相続人

第三順位までの者がないときには、家族たる直系尊属がなるものとされていました。その場合、親等の近いものが先順位となり、親等が同じ場合、男が優先されました。

 

第五順位  第二種選定家督相続人

第四順位までの者がないときには、親族会が指定するものとされていました。正当な事由があれば、裁判所の許可を得て、他人を選定することもできました。

 

 

おわりに

旧民法の相続登記を受任したため、改めて勉強しなおしたことから、今回は旧民法下での相続に絞って記事を書いています。

他の身分に関する行為などを入れると、とてもコラム一回分には収まりません。

しかし、全く無関係というわけではありませんので、旧民法シリーズとして、いずれ書いてみたいと思います。

(文責:庄田)

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